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諸外国の国民が思う、相手の国の好き嫌いの実情をさぐる(2023年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
食べ物の好き嫌い同様に、国単位での国民間の好感・嫌悪感は存在する(写真:アフロ)

国としての政策姿勢とは別に、国民レベルで他国に向けた好感、嫌悪感といった感情は確実に存在する。その実情を新聞通信調査会が2023年2月に発表した、アメリカ合衆国やイギリス、フランス、中国、韓国、タイへのメディアに関する世論調査「諸外国における対日メディア世論調査」(※)の報告書の内容から探る。

次に示すのは、その対日本も含めた調査対象の各国における、自国以外の国への好感度の指標。好感が持てる(強弱)、好感を持てない(強弱)、加えて実質的にもう一つの選択肢である無回答(あるいは分からない)も合わせ5択のうち、強弱を合わせた好感が持てる派の回答率を合計した値となっている。

日本は調査実施国ではないので掲載されていない。自国を対象とした回答は、自国愛があるか否かと解釈すればよいだろう。

↑ 対象国に好感が持てる人の割合(2022年度)
↑ 対象国に好感が持てる人の割合(2022年度)

各国の市民感情としての他国への敬愛度、好感度が如実に現れているのが興味深い。アメリカ合衆国は日本以外では英仏への値が高く、タイへも7割台と高めの値。韓国へは半数近く、中国へはわずか2割台。イギリスやフランスも似たようなものだが、対中国の値がいくぶん高め。フランスは韓国への値も高い。

タイはおおよそどの国へも好感度が高いが、対中国は6割台にとどまり、対ロシアでは3割台。韓国では日本に対する値が一段と低いが、中国への値はそれより低い。

中国はといえば、フランスへの好感度が一段と高く6割強、次いで対タイが6割近く。対日は低く2割台で、対米の値とほぼ同じ。中国にとって日本とアメリカ合衆国は同一視されているのだろうか。昨今の米中関係を推し量れる値ではある(アメリカ合衆国の対中好感度も21.6%と低い)。

また対ロシアの値を見ると、どの国も低いものとなっているが、それでもフランスとタイでは2~3割程度の値で、中国では45.1%と対イギリスや対韓国とさほど変わらない値になっており、対日や対米よりも高い値なのが印象的。

これらの値はあくまでも一般市民の思惑であり、各国の政府や行政などの姿勢とは別物。とはいえ民主主義国家では多分に市民感情なるものが国策に影響を与えうることを考えると、無視できない結果には違いない。

余談ではあるが、以前の報告書で特記事項的に記されていた、中韓の好感度合いの推移を確認したのが次のグラフ。

↑ 中韓の互いの国への好感度
↑ 中韓の互いの国への好感度

中国→韓国はかなり波があり、ここ数年で持ち直しの気配もあったが、韓国→中国はほぼ漸減傾向にあり、2015年度から2022年度の間に好感度が半減以下となってしまっている。両国の間に何があったのかはさておき、特に韓国サイドからの好感度の減少が生じているのは興味深い傾向に違いない。

■関連記事:

【米露中韓印…日本から主要5か国への親近感の推移をさぐる(2023年公開版)】

【日本を信頼できる? 好感を持てる? 諸外国の国民の思惑は二極化(2021年公開版)】

※諸外国における対日メディア世論調査

直近発表分はアメリカ合衆国、イギリス、フランス、中国、韓国、タイに対し、2022年11月から12月に行われたもので、アメリカ合衆国は電話調査とウェブ調査の併用、イギリス・フランス・韓国は電話調査、中国・タイは面接調査で実施されている。調査地域は中国・タイは都市圏、それ以外は全国。回収サンプル数は各国約1000件。グラフの年数表記は調査結果の発表年で統一している。過去の調査もほぼ同じ形式で実施されたが、2014年度分は中国において質問そのものができなかった項目が複数ある。またイギリスの2020年度分は新型コロナウイルスの流行悪化の影響で調査はできなかったため、回答値が一切無い。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は 【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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