朝鮮半島情勢、中国、ロシアの侵略戦争…日本国民の防衛面からの関心事
周辺諸国の軍拡と軍事的圧力の増大、国境を超えた反社会的勢力の策謀、同盟国アメリカ合衆国の日本の周辺諸国とのやりとり、ロシアによるウクライナへの侵略戦争、そしてインターネットを介した攻撃…日本の平和と安全を脅かしそうな要素は多様な機会で見聞きすることとなり、改めて平和と安全の大切さを思い知らされる。当然、伝えられる、実体化する事象が多いほど懸念も大きなものとなり、関心も寄せられることになる。
今回は内閣府が2023年3月に発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査(※)の結果報告書から、世間一般の人が日本の平和と安全の面、つまり防衛問題に関して、どのような事柄に関心を持っているかを確認し、日本を取り巻く諸問題への認識を見ていくことにする。
防衛問題について世間一般の人が気にかけるであろう項目を選択肢として複数挙げ、そのうち回答者が実際に関心を抱いている対象について、複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。もっとも多くの人が「関心あり」と答えた項目は「北朝鮮による核兵器や弾道ミサイル開発など」だった。7割近い人が関心ありと回答している。昨今の弾道ミサイルの相次ぐ実験や核開発問題、日々行われる恫喝が伝えられる昨今では、多くの人が関心を寄せるのも当然ではある。
次いで多数の人の関心事として選ばれたのは「日本の防衛力・防衛体制」で64.0%。日本の周辺に不安要因があるとして、日本自身はどのような抑止力・対抗能力を持っているかに関心を寄せるのは当然のことではある。
さらに「中国の軍事力の近代化や海洋における活動」が61.8%。こちらも昨今の挙動が日々伝えられることで、大きな関心を集めている。日々情勢が動き報じられている「ロシアによるウクライナ侵略状況やその影響」は4番目、52.1%の値にとどまっているのは意外かもしれない。
北朝鮮や中国の挙動とも深いかかわりあいのある「日本の周辺地域における米国の軍事態勢」「大量破壊兵器やミサイルなどに関する軍備管理・軍縮分野」が続くが、おおよそ日本の近隣諸国の中でも北朝鮮と中国がかかわっている項目で、日本の平和や安全の観点では多くの人がこれらの国の動向に注意を払い、懸念を持っていることが分かる。
昨今の情勢にかんがみ追加された選択肢「フェイクニュースの流布や情報発信・意思決定の妨害などの情報戦をめぐる動向」「宇宙空間・サイバー空間をめぐる動向」は2割強と用意された具体的な選択肢の中では低い値にとどまってしまっている。ある意味、日本の平和と安全においては周辺地域だけでなく、世界全体で包括的な視点で考える必要性のあるものなのだが。
より緊迫感、必要性の高い事象に対し国民一般からの関心が強まるのは当然の話。ただしその動きが過度に至ると、情報の送り手側に扇動されるリスクも上乗せされる。踊っているつもりが踊らされているだけだった、という類のものである。受け取れる情報をうのみにするのではなく、判断材料として取り込み、自分で考える能力を身に付けることをお勧めしたい。
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※自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査
2022年11月17日から12月25日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた18歳以上の日本国内に在住する日本国籍を持つ人に対し、郵送法で行われたもので、標本数は3000人、有効回答数は1602人。有効回答者の男女構成比は757対845。年齢階層別構成比は18~29歳が170人、30代が162人、40代が240人、50代が276人、60代が306人、70歳以上が448人。
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