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2か月以上の家賃滞納率は0.4%…賃貸住宅の平均家賃滞納率の現状をさぐる(2022年11月発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
家賃は払いたいがお財布事情が厳しい…と滞納してしまうケースも(写真:イメージマート)

賃貸住宅住まいの人は原則として毎月家賃を何らかの形で支払わねばならない。ところが手違い、金繰りがつかないなどの理由で滞納してしまうケースがある。その実情を賃貸住宅の管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」(※)から確認する。

月末、25日、10日前後など、物件によって日取りは異なるが、賃貸住宅の家賃は原則として月1回支払いが行われる。昨今では事前に取り交わした契約に従い、自動的に金融機関の口座から引き落とされる場合が多い。その自動引き落としだが、銀行口座残高の調整ミスで残高不足から家賃の引き落としを行えず、気がつけば家賃を滞納してしまうトラブルもある。家賃引き落とし専用の口座を別途設けていても、その口座への入金をつい忘れてしまうとのパターンもありうる。

そこで「月末での1か月滞納率」「(状況が悪化した、連続した滞納状態の)月末での2か月以上滞納率」それぞれについて、直近値からグラフ化したのが次の図。

↑ 家賃滞納率(地域別)(2021年度)
↑ 家賃滞納率(地域別)(2021年度)

直近年度において、月末での1か月滞納率は全体で0.9%も発生している。111世帯に1世帯の割合である。2か月連続して「危険信号」レベルになると0.4%の域に達する。

2か月以上の滞納率0.4%。これは「賃貸住宅の250世帯に1世帯は現在2か月以上家賃を滞納している」状況となるわけだが、切り口を変えて「通常支払い率99.6%」と表現すればかなりよい方に見える。ただしリスクは低いに越したことはない。例えば1棟が5階建・10列(=50部屋)の大型団地なら、5棟あたり1世帯は2か月以上の家賃滞納世帯が存在する計算になるからだ。

そして2か月もの滞納状態ともなれば、状況がさらに悪化し、未回収(+管理会社の費用持ちでの原状復帰作業)となる可能性は高い。また、これには「空き室率」は勘案されていないため、賃貸住宅の採算率はそれより悪くなる(空き室率は1割前後が一般的)。

地域別では「関西圏」「首都圏・関西圏以外」の値が高いのが目にとまる。短観では間接的にではあるが「前年に引き続きコロナ禍による収入減が影響し、実質滞納率は増加していると考えられるが、滞納保証会社による代位弁済が多分に影響した結果と思われる」と言及しており、この影響が特に「関西圏」では強く出ているものと思われる。

現在賃貸住宅市場は借り手が優位な市場状況ではあるが、賃貸住宅利用者は「住まいを借りている立場」であることを忘れるべきではない。理由はともあれ、万一にでも家賃滞納を起こしてしまったら、すぐにでも家主、管理会社に一報を入れ、最善を尽くしてほしいものだ。

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※賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)

2022年7~8月にインターネットを用いて日本賃貸住宅管理協会会員に対して行われたもので、有効回答数は504社(回収率28.9%)。2021年4月から2022年3月に関する状況について回答してもらっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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