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新型コロナで男性0.10年・女性0.07年の短縮…どの死因が平均寿命に影響したのか(2022年版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
医療技術の進歩で平均寿命は延びつつある。どの死因で延びたのか(写真:アフロ)

厚生労働省から2022年7月に発表された2021年分の簡易生命表には、主要な死因が寿命に与えた影響を示す「平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数」が掲載されている。この内容を確認する。

まず「死因別寄与年数」の言葉そのものだが、これは「該当死因を除去した場合、平均余命がどれだけ延びるか」を意味する。ゼロ歳を対象とした場合は、そのまま平均寿命の延びとなる。例えば2021年における男性・ゼロ歳における、死因としての悪性新生物を除去した場合、平均余命(寿命)は3.43年延びるとある。

そして今回確認する値・グラフは、その「死因別寄与年数」の2021年における前年比。2011年には東日本大地震・震災が発生し、その影響が大きく2011年・2012年分のデータには生じていたが、それも2013年にはほぼ消えており、日本の平均寿命・死因状況は震災以前の状態に戻りつつある。それが別の切り口から分かるのが、次に示す図。

参考までに震災の影響を確認できる2012年分も併せて掲載する(本当は震災当年である2011年のものが一番よいのだが、当年の簡易生命表では数字による死因別寄与年数の全体的な前年比の公開は行われていない。なお2011年における地震を起因とした平均寿命の寄与年数は、男性でマイナス0.26年、女性で0.34年となっている)。ちなみに両グラフでは縦軸の区分が異なる点に注意してほしい。

↑ 平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(男女別、年)(2021年)
↑ 平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(男女別、年)(2021年)

↑ 平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(男女別、年)(2012年)
↑ 平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(男女別、年)(2012年)

グラフ項目中「交通事故」「熱中症」「地震」は「不慮の事故」に内包されたもの、「新型コロナウイルス感染症」は「その他」に内包されたもの。そして「悪性新生物・心疾患・脳血管疾患」(いわゆる三大成人病)は個々の項目をすべて同時に除去したものである。また2021年のデータでは2012年と比べて「地震」「熱中症」項目などが削除され、「(新型コロナウイルス感染症)」「大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)および解離」(大動脈が大きく膨らんだ状態になるのが大動脈瘤、大動脈の血管の内壁に亀裂が入って剥離状態となるのが大動脈解離)などが入っている。

この項目の変化は、2021年では地震による平均寿命への影響は、ほとんどゼロと認識してよいほどの状態になったことを意味する。2012年では寄与年数が、大きくプラスに振れていた状況からは大きな変化である(2012年が前年比で大きくプラスに振れたのは、その前年に当たる2011年で地震による不慮の事故者が多発し、結果として平均寿命を押し下げた反動によるもの)。また2012年、さらには今回掲載はしていないものの前年2013年時点では「熱中症」が存在していたが、2014年以降は消えており、少なくとも2014年以降においては熱中症による死亡者が、平均寿命に影響を及ぼすほどの数は発生しなかったことが分かる(記録的な猛暑となり「命の危険」が連呼された2018年でおいてですら、である)。

具体的項目では「老衰」「(新型コロナウイルス感染症)」が大きなマイナス値を示している。これは2020年と比べて「老衰」「(新型コロナウイルス感染症)」を死因とする人が増えていることを意味する。特に「(新型コロナウイルス感染症)」は大きく平均寿命を引き下げる結果となっている。

また三大成人病による平均寿命はプラス(つまり平均寿命を延ばす)方向にあり、状況は改善に進んでいることも確認できる。さらに三大成人病以外では「悪性新生物(がん)」「肺炎」「(交通事故)」でも大きな改善が生じていることが分かる。

資料では小数第二位までの有意値が数字として記されているが、それ以下のマイナス値を示している印として男性において「自殺」、女性では「糖尿病」「大動脈瘤および解離」「慢性閉塞性肺疾患」「肝疾患」「腎不全」が確認できる。ほんのわずかではあるが、これらの項目で寿命を縮める、状況が悪化する動きが見られたことになる。数字の上ではわずかには違いないものの、色々と気になる動きではある。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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