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政府支出総額比率で主要国軍事費の動向をながめ見る(2022年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
大型空母の維持には莫大な費用が。所有できるのはごく一部の国(写真:ロイター/アフロ)

国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)の公開資料を基に、主要国の軍事費を政府支出の総額比率の視点から確認する。各国の軍事費の実情を推し量ることができよう。

そのSIPRIの発表によると直近となる2021年における各国軍事費(米ドル換算)で、トップはアメリカ合衆国、次いで中国、そしてインドの順となっている。

↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2021年)
↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2021年)

これは単純に米ドル換算して比較したもの。国によって内情が異なることから、単純な額面比較だけでは問題では無いかとの指摘もある。そこでそれぞれの国の政府支出総額、つまり国家予算に占める軍事費の比率を算出する。

次に示すのは2021年時点における米ドル換算による軍事費上位10か国の、それぞれの国の政府支出総額に占める軍事費の割合。例えば日本は2.5%とあるので、国家予算全体の2.5%が軍事費にあてられていることになる。また過去値を用い、精査可能な範囲での過去の比率推移を折れ線グラフ化する。

なおアメリカ合衆国の値は今回発表のレポートでは、全年分が未掲載となっている。これについてSIPRI側では「同国の数字は暦年ではなく会計年度(前年10月1日~当年9月30日)だから」と説明しているが、正直なところ意味不明ではある。よって今回は前年発表分の値をそのまま適用させ、さらに直近年となる2021年分はその前年の2020年の値を代用する。

↑ 軍事費の対政府支出総額比(2021年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)(2021年)
↑ 軍事費の対政府支出総額比(2021年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)(2021年)

↑ 軍事費の対政府支出総額比(2020年時点の米ドル換算で軍事費上位5か国)
↑ 軍事費の対政府支出総額比(2020年時点の米ドル換算で軍事費上位5か国)

↑ 軍事費の対政府支出総額比(2020年時点の米ドル換算で軍事費上位6~10位の国)
↑ 軍事費の対政府支出総額比(2020年時点の米ドル換算で軍事費上位6~10位の国)

それぞれの国の各年における経済状況や周辺環境にも大きく影響するため、一概にどの程度が望ましい値なのかに関する基準値は無い。経済力に見合わない軍事費負担が国そのものの経済を不安定化させることも事実。

一方、同じ軍事費でも政府支出全体が増加すれば比率は下がる。政府支出総額に対する比率の低下は、単に軍縮・予算不足による削減以外に、経済力の伸張を意味する場合もある。

中東諸国は概して比率が高い傾向がある。そのため額面そのものも大きくトップテン入りしたサウジアラビアのために、グラフ全体の縦軸の最高値を引き上げる必要が生じる状況が生じている。それでもかつて示していたピーク時の4割超えと比べ、直近では20.5%にまで落ち着いている。

ロシアはいくぶん増加傾向にあったが、ここ数年では前年比で減少。その他のおおよその国では減少傾向にある。中国も総額比率では減少しているが、これは他国とは少々事情が異なり、経済成長による総支出額に軍事費の増加が追い付いていないため(ただし直近年では前年比で比率は増加している)。また今件で公開されている軍事費に関して中国の値は内情が推し量りにくいため、推定値となっているのも要因だろう。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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