Yahoo!ニュース

4マスそれぞれの業種別広告費前年比から広告主の姿勢をさぐる(2022年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
紙媒体は公知力の減少に伴い、広告費も減少中との話だが(写真:イメージマート)

電通は2022年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2021年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に4大従来型メディア(テレビ、雑誌、新聞、ラジオ。4マス)へ広告を出稿した業種別企業の広告費の前年比を確認する。各業種がそれぞれの媒体に与えている・認識している公知力、ウェイトの変化などが把握できよう。

2021年における媒体別広告費前年比は次の通り。4大従来型メディア(マスコミ四媒体)とインターネット広告が堅調、プロモーションメディア広告は軟調との結果が出ている。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2021年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2021年)

今調査報告書では広告出稿元(クライアント)を21業種に区分し、4大従来型メディア(テレビメディアにおいては衛星メディア関連は除く。グラフでは地上波テレビと表記)それぞれに対する出稿広告費、各メディアが受領している出稿額全体に対する構成比、そして前年比の一覧が掲載されている。

まずは新聞についてその動きに関するグラフを作成し、状況を確認する。なお次以降4媒体のグラフは、すべて縦軸の区分を同じものとし、状況の比較がし易いようにしている。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(新聞、前年比)(2021年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(新聞、前年比)(2021年)

雑誌とともに軟調さが際立つ新聞だが、2021年では少なからぬ業種でプラスの値が出ている。もっともこれは、比較対象となる前年2020年が新型コロナウイルスの流行で大きなマイナスを示したことの反動によるところが大きい。

最大のマイナス幅を示したのは自動車・関連品でマイナス13.4%。次いでエネルギー・素材・機会、案内・その他などが大きめの下げ幅。とはいえ、1割台の下げ幅は自動車・関連品のみである。他方、プラス幅では1割台の上げ幅を示した業種が6業種と、それなりな盛況ぶりがうかがえる。

続いて雑誌。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(雑誌、前年比)(2021年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(雑誌、前年比)(2021年)

プラスの業種が多い理由は新聞と同じく、比較対象となる前年2020年が新型コロナウイルスの流行で大きなマイナスを示したことの反動。それでもマイナス幅を示したのは6業種のみで、新聞以上に堅調なようにも見えるが、全体ではプラス0.1%にとどまっており、かろうじてプラスとなったのが実情。これは化粧品・トイレタリーやファッション・アクセサリーのような、高額の業種が大きく下げたのが原因である。

紙媒体との観点では親和性が高い出版(新聞、雑誌、書籍、語学教材、他の刊行物)はプラス16.1%と大きなプラス幅。出版の広告のうち少なからずは、同一コンテンツを用いたインターネット媒体上に流れているのだろうが、それでも紙媒体としての雑誌上の広告が増えたのは好ましい話ではある。

次はラジオ。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(ラジオ、前年比)(2021年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(ラジオ、前年比)(2021年)

マイナスの業種は10と多いが、高額の業種が大きなプラス幅を示していることもあり、全体ではプラス3.8%。精密機器・事務用品のマイナス25.6%のような大きなマイナス幅の業種もあるが、化粧品・トイレタリーのプラス32.4%のように大きくプラスを示した業種もある。「最近ラジオでこの企業、この業種のCMが多いと思っていたが、広告費が増えていたのか」と納得する人もいるであろう結果に違いない。

最後は地上波テレビ。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(地上波テレビ、前年比)(2021年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(地上波テレビ、前年比)(2021年)

マイナス業種数は5つ。一方でプラスとなった業種ではプラス幅が大きいものが多数見られる。案内・その他と精密機器・事務用品は5割を超えたプラス幅。出版と情報通信は3割台の上げ幅を示しており、他のメディアを圧倒する勢いが生じている。全体でプラス11.7%と2ケタ台のプラスとなるのも納得の行く内容ではある。

4マスの中では一番広範囲への媒体力・告知効果が高いのが地上波テレビ。各商品・サービスとの相性のよし悪しもあるが、各業種の勢いが大きく表れているのが興味深い。

今回の各グラフとそれぞれの媒体における各種業種への報道姿勢を比較すると、色々と面白い連動性が見えてくる、かもしれない。

■関連記事:

【ネット上の情報、新聞や雑誌と同じように信用できる?】

【新聞広告費とインターネット広告費の金額はどちらが上なのか(2020年9月発表版)】

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事