インターネット以外はおおよそ減少継続中

昔は本屋でしか手に入らなかった出版物も、今ではコンビニやネット通販など多様なルートで購入ができる。購入ルート別の販売動向を日販の「出版物販売額の実態」最新版(2021年版)を基に確認する。

昨今では電子書籍の流通も進んでいるが、電子書籍でも少なからず取次を経由しており、一般書籍とさほど変化は見られない。直近年度分となる2020年度では電子出版物の市場は4744億円で、インターネット経由の出版物の通販(インターネット専業店を経由して販売された推定出版物販売額。アマゾン経由なども含む)を超え、当然コンビニ経由をも超える額となっている。しかしながら今記事はあくまでも「出版物」を対象としているため、数字には反映していない。

なお「その他取次経由ルート」とは生協ルート、駅販売ルート、スタンドルートの合算。昨今では駅売店の一部が大手コンビニチェーン店によってコンビニ化されているが、これはコンビニの値として計算されている。

また「出版社直販」との項目があるが、これは出版社が取次を通さずに直接販売店や読者に出版物を販売するルートを指す。具体的な例としては個人読者以外に学校や研究施設、教育機関、企業などが相当する。グラフ記載の際には、通常の販売ルートとは多少色合いが異なるため、項目順としては最後に並べている。また、2018年度分・2019年度分でそれぞれ前年度から集計方法が変更されているため、2017年度分までの値と2018年度分、そして2019年度分との間には厳密な連続性は無い。

それでは主要販売ルート別の推定出版物販売額を直近5年間の動きで見ていく。元データはもっと細かい部分まで出ているが、億円以下は四捨五入で掲載。書店ルートがトップなのは当然だが、インターネットが現時点では第2位のポジションについているのが分かる。

↑ 販売ルート別出版物販売額(億円)(2016~2020年度)
↑ 販売ルート別出版物販売額(億円)(2016~2020年度)

↑ 販売ルート別出版物販売額(構成比)(2016~2020年度)
↑ 販売ルート別出版物販売額(構成比)(2016~2020年度)

電車通勤をしている人にはお馴染みの駅売店を含む「その他取次経由」は、金額ベースでは425億円。インターネットルート(アマゾンジャパンや楽天ブックスなども、把握できる範囲で含む)は2636億円、構成比は18.0%。インターネット経由の出版物販売は著しい成長率を見せ、出版物販売全体のシェアを拡大しつつある。立ち位置としては広告業界における既存媒体広告(いわゆる「従来型広告媒体」「4マス」)と、インターネット広告のような関係と表現できるだろう。また、この5年間に限れば、インターネット以外の主要ルートのほとんどすべてで販売額が漸減している実情がうかがえる(出版社直販が2018年度に前年度比で大きく伸びたのがイレギュラーな動きとして見られる程度。これは集計方法の変更によるもの)。2017年度においてコンビニとインターネットとの順位が入れ替わったが、その序列は継続中である。

長期動向の確認

より長い期間での推移を見るため、今資料にデータとして収録されている過去の分を用い、すべてのデータと直近10年度分について、積み上げグラフと全体比グラフにしたものを作成する。長期データは1973年度以降の値が取得可能だが、過去3回算出方法の変更が行われているため、変更開始年度には「*」をつけている。その前後の値に完全な連続性は無い。

なお今件では電子書籍は含まれていない。さらに2006年度まではインターネット経由の数字は「その他」項目に区分されていたが、2007年度以降は別個の項目として新設されている。出版社直販は2006年度分から新たにデータ上に反映されている(そのため販売総額が大きく底上げされている)。

↑ 販売ルート別出版物販売額(億円)
↑ 販売ルート別出版物販売額(億円)

↑ 販売ルート別出版物販売額(*はその年度から算出方法変更、億円)(1973年度以降)
↑ 販売ルート別出版物販売額(*はその年度から算出方法変更、億円)(1973年度以降)

算出方法の変更が行われた年度の前後で大きな変化が生じているが、それを除けば1996年度をピーク(出版社直販を加えれば2006年度をピーク)とし、それ以降はほぼ右肩下がりの販売額状況にあることがあらためて確認できる。特に算出方法を最後に変更した2006年度以降は一度も盛り返しを見せることなく、額は落ち込む一方だった。しかし直近の2020年度では、インターネットが大きく伸びたことから全体も底上げされ、全体でも久々に前年度比でプラスを示す形となった。

戦後直後の出版ブーム期を除けば、雑誌点数は2005年前後、新刊の書籍点数は2013年をピークにようやく減少を見せ始めたが、それまでは増加の一途にあった。しかしながら販売総額はすでに前世紀末にピークを迎えていたことになる。

また取次企業の公開資料を確認する限りでは、返本率は書籍などで約3割、雑誌に至っては約4割に達している。このことから、読者側の趣向の多様化により、雑誌や書籍の販売点数は増えても1種類あたりの発行部数が減っていると見るのが推論としては正しいようだ。よく言えば趣向の多様化に対応した戦略、うがった見方をすれば「数撃ちゃ当たる」「ノリと勢いで新刊を出し、ロングセラー的な売り方にはあまり注力しない」的な表現が当てはまる。さらにヒットする・しないで作品の販売動向が二極化する傾向も見受けられる。

他方、書店数は減少する一途をたどっているが、それにもかかわらず、書店の販売比率(全出版物販売額比)は大きな減り方を示していない。

↑ 総書店数・総売り場面積(経済産業省・商業統計より)
↑ 総書店数・総売り場面積(経済産業省・商業統計より)

ここ10年では数%ポイント、もっとも古い値の1973年度との比較でも(算出方法が変わっているが)20%ポイント程度の減少でしかない。これは販売「額」を見ればお分かりの通りで、書店の販売「額」そのものは減少しているものの、それ以上に他の区分、とりわけコンビニや駅売店を含めた「その他取次経由」の販売額が減少しているのが要因。

一言で表現すれば「書店以上に他の小売で出版物の売れ行きが減り、相対的に書店での販売額比率は大きな減少をしてはいない」ことになる。書店の相次ぐ閉店、そして連動する形で販売機会の減少が声高に叫ばれているが、「リアルな購入機会の減少」事案は、それ以外の場所でもっと深刻化している次第ではある。

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【書店数、確実に減少中…書店の減り具合】

(C)日販 営業推進室 出版流通学院「出版物販売額の実態2021」

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、また(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。