高齢者の人口比率の増加や一人暮らし世帯数の増加などを主な原因とし、高齢者による自動車の交通事故が社会問題化している。その対応策の一環として進められているのが、高齢者に運転免許の自主返納などを勧める動き。その動きがある中で、運転免許を保有し続け、自動車を運転する高齢者はたくさんいる。それではそのような高齢者は、なぜ自動車を運転しているのだろうか。内閣府が2021年3月に発表した調査「高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)」(※)の結果を基に確認する。

体力などの身体能力や判断力が低下し、安全運転に自信が無くなっても、自動車の運転を続ける高齢者は少なくないものと考えられる。あるいは実際に能力が低下しても、それに気が付かない場合もあるだろうが。自分では危ないだろうと認識している人も含め、なぜ自動車の運転を続けるのか、調査対象母集団のうち免許保有者に限定して尋ねた結果が次のグラフ。最上位の理由についたのは、「買い物などお店に行くため」で82.0%の人が同意を示した。

↑ 自動車を運転する理由(免許保有者限定、複数回答)(2020年度)
↑ 自動車を運転する理由(免許保有者限定、複数回答)(2020年度)

お店に行くのに自動車が必要な理由は細かく分類するといくつかあり、単純にお店が自宅から遠いため歩きなどでは難しい場合に加え、お店で買った商品を自宅まで持ち帰るのに歩きや自転車では不可能な場合が挙げられる。例えば酒屋でミネラルウォーターやビールをケースで買っても、自宅まで歩いて持ち帰るのは不可能だろう。第4位の「荷物を運ぶのに困らないようにするため」も一部はこれに該当する。

続いて「趣味で外出するため」の51.0%。電車など他の移動手段ではなく、あくまでも自動車を運転して遠出をしたり、さらには宿泊も含めた旅行をするのが好きな人が多々いるということになる。

一方で自宅の近場に通院している病院がないために自動車が必要だとする「通院のため」が46.3%。都市圏ならともかく、地方などでは自分の通う科がある病院は自宅から距離が離れていることも多々ある。自動車を安全に運転できるような病気・けがでの通院なら、自動車の運転で通いたくなるのも道理ではある。

41.3%の「荷物を運ぶのに困らないようにするため」は、トップの「買い物などお店に行くため」と重なるような「お店で買った商品を自宅に持ち運ぶ」意味合いだけでなく、例えば仕事の荷物を自宅から現場に持ち出すとか、畑仕事に必要な肥料や道具を自宅から畑まで持っていく時などが考えられる。手持ちや自転車では不可能な量の荷物を、楽に目的地まで移動させる手段として、自動車を利用している次第。24.3%の「仕事に必要だから」もこれと被る部分が多い。

17.7%の「運転することが楽しいから」は「趣味で外出するため」に近いが、「趣味で外出するため」はあくまでも自動車の運転が手段にとどまっているのに対し、「運転することが楽しいから」は運転そのものが目的となっている。両方が被っている人もそれなりにいるような感はある。

8.3%の「(あまり)運転しない」が気になる人もいるかもしれない。これは、今件設問があくまでも免許保有者を対象としたものであり、すべてが自動車を運転している人とは限らないことに由来する。高齢者が免許を手放し、自動車の運転を止める方法には、単純に運転免許を返納するだけでなく、運転免許を手元に残しておくが運転はせずに、そのまま放置して更新手続きを取らず、自主的に失効させるパターンもある。このような形で免許を失効させた、事実上の免許返上者を自主失効者と呼んでいるが、「(あまり)運転しない」はその多くが、この自主失効者になるのを待っている状態だと思われる。無論、自動車の運転は元々していないが、身分証明の代わりに運転免許を保有し続ける人もいるだろうが。

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※高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)

2020年12月から2021年1月にかけて65歳以上の人に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1500人。免許保有者は832人、自主返納者などは668人。都市区分では都市部在住者416人・地方都市在住者416人・その他417人・過疎地251人。都市区分に関しては「都市部」は特別区や指定都市、「地方都市」は中核市や施行時特例市、「過疎地」は過疎地域自立促進特別措置法により過疎地域とされている市町村、「その他」は都市部・地方都市・過疎地以外の市町村。「自主返納者など」は運転免許の全部の自主返納者および一部の自主返納者、免許を更新せずに置いておき、そのまま自主的に失効させた人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。