Yahoo!ニュース

母子(父子)世帯は外食が少なめで中食比率が高い…働く二人以上世帯の食費構成をチェック

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
働く夫婦世帯はどのような食生活を過ごしているのだろうか。(写真:Paylessimages/イメージマート)

食の様式は自宅で食材を調理し食べる内食、調理済み食品を調達し自宅で食べる中食、専門店など家の外で食べる外食の3つに分類される。働く二人以上世帯における、食生活全体に占める食の様式の変化を、総務省統計局が2021年5月までに発表した全国家計構造調査(※)の結果を基に確認する。

次に示すのは、二人以上世帯のうち勤労者世帯を様式で区分し、1か月の食料費品目の詳細を精査したもの。「外食」「調理済みの食品(中食)」、そして「素材となる食料」「その他(調味料や飲料、酒類など)」をまとめて「その他(素材食料)(≒内食)」と分類し、食料費全体に占める比率の変化を計算した。

↑ 二人以上世帯のうち勤労者世帯の世帯類型別食料支出(品目構成、食料費全体に占める割合)(2019年)
↑ 二人以上世帯のうち勤労者世帯の世帯類型別食料支出(品目構成、食料費全体に占める割合)(2019年)

まず気がつくのは内食、つまり「その他(素材食料など)」の比率が6割台から7割台と比較的高めなこと。一人暮らしの食生活と比べて、炊事をする家族構成員がいる可能性が高い、まとめて一度に一定量を調理するメリットが得やすいことから、内食の頻度が増えるのも当然ではある。

↑ (参考)若年勤労単身世帯の食料の費目構成(女性)
↑ (参考)若年勤労単身世帯の食料の費目構成(女性)

さらに個々の世帯構成別に見ると、

・夫婦のみと子供がいる夫婦世帯では外食、中食、内食比率に差異はほとんどない。子供の数が増えるのとともに中食比率がわずかに減る程度。

・母子(父子)世帯は外食が少なめ。その分中食比率が高い。保護者の労働による拘束時間が長く調理に費やす時間が不足しているのが原因か。

・祖父母がいる世帯は内食比率が5%ポイントほど高くなる。炊事担当者が増える、高齢層向け食事は外食や中食では心もとないのが要因か。

などの傾向が見て取れる。

これを食料費全体に対する比率ではなく、金額で見たのが次のグラフ。

↑ 二人以上世帯のうち勤労者世帯の世帯類型別食料支出(品目構成、円)(2019年)
↑ 二人以上世帯のうち勤労者世帯の世帯類型別食料支出(品目構成、円)(2019年)

世帯構成人数が一番多い「夫婦と子供と親」の総額が最大値を示すのは当然ではあるが、その一方で母子(父子)世帯の食費の厳しさも見て取れる。ただし構成人数とその中身で考察すると「夫婦のみ」も同じ2人ではあるが、母子(父子)世帯が「大人1人+子供」、「夫婦のみ」は「大人2人」。大人と子供の食費の違いを考えれば、やや少なめになるのも当然との見方もできる。

また夫婦世帯と子供数の関係を見るに、子供1人あたりにつき食費は月に6000~7000円程度のプラスがされるようだ。

各食生活関連の調査結果や小売業の商品展開戦略を見ると、今後「中食」のニーズはさらに増加していくことが予想される。実際、各世帯構成別に前回調査分からの構成比率の変移を見ると、おおよその世帯で内食比率が減り、外食と中食が増えている。特に中食の伸びは大きく、すべての区分で増加を示している。

↑ 二人以上世帯のうち勤労者世帯の世帯類型別食料支出(品目構成、食料費全体に占める割合、2014年から2019年への変移、ppt)(2019年)
↑ 二人以上世帯のうち勤労者世帯の世帯類型別食料支出(品目構成、食料費全体に占める割合、2014年から2019年への変移、ppt)(2019年)

5年の間に食文化も大きく様変わりし、特にスーパーやコンビニにおける惣菜の充実ぶりには目を見張るものがある。中食の利用比率が増加しているのも当然の動きといえる。一方で変化度合いの差異を見るに、調理に割く時間のあるなし、子供への食育事情なども合わせ、色々と考えさせられる動きには違いない。

■関連記事:

【スーパー、コンビニ、ファストフード…中食料理の食卓登場度を探る】

【増える中食・内食、理由は節約や健康志向】

※全国家計構造調査

家計における消費、所得、資産および負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布および消費の水準、構造などを全国的および地域別に明らかにすることを目的としている。調査間隔は5年おきで、直近となる2019年は10月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は全国から無作為に選定した約9万世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、郵送提出か、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事