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対人口比で主要国軍事費の動向をながめ見る(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 軍の維持には多額の費用が。個々の国の人口比では?(写真:ロイター/アフロ)

国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)の公開資料を基に、主要国の軍事費をそれぞれの国の人口比の視点から確認する。各国の軍事費の実情を推し量ることができよう。

SIPRIの調査の限りでは、2020年における各国軍事費(米ドル換算)でトップはアメリカ合衆国、次いで中国、そしてインドの順となっている。

↑ 主要国軍事費(SIPRI発表値、米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2020年)
↑ 主要国軍事費(SIPRI発表値、米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2020年)

このグラフは単純に米ドル換算での額の多い少ないを比較したもの。他方、国家間比較の話でよく持ち上がる意見の一つが「人口が多ければ国の規模も大きくなるから、大国の数字が大きくなるのも当然」とするもの。そこでそれぞれの国の軍事費を、各国の人口で除算し、国民1人あたりの軍事費を算出したのが次のグラフ。

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2020年時点の米ドル換算、2020年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国、米ドル)(2020年)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2020年時点の米ドル換算、2020年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国、米ドル)(2020年)

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2020年時点の米ドル換算、2020年時点の米ドル換算で軍事費上位5か国、米ドル)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2020年時点の米ドル換算、2020年時点の米ドル換算で軍事費上位5か国、米ドル)

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2020年時点の米ドル換算、2020年時点の米ドル換算で軍事費上位6~10位の国、米ドル)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2020年時点の米ドル換算、2020年時点の米ドル換算で軍事費上位6~10位の国、米ドル)

対政府支出総額が大きめなサウジアラビア(21.7%、2020年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国の中ではトップ)が、対人口額でも大きな値を示している。他方アメリカ合衆国がそれ以上の値を示しており、あの人口をもってしてもこれだけの高額になるほど、アメリカ合衆国の軍事費が大きいことがうかがえる。

絶対額では大きな伸びを示す中国やインドだが、人口比では少額にとどまっている。日本は1人あたり388.6ドル。

経年推移を見ると、円安の影響を受けた日本で一時的な下落の動きがあったものの、それ以外の国では概して増加傾向にあることが確認できる。人口が急激に増減する事象は生じていないことから、軍事費はおおよそ増加傾向にあると見てよいだろう。また、アメリカ合衆国は2012年以降は減少傾向を示していたが、2018年以降は増加に転じている。しかしそれでもまだ2011年前後と比べれば少ない値であることも確認できる。

インドや中国のように多分な人口を抱える国の動向が分かりにくいこともあることから、対人口比の額面がどのような変化を示したのか、該当国すべてで値を取得できる最古の1989年当時と直近の2020年の値を比較し、その増加ぶりを倍数で示したのが次のグラフ。例えばアメリカ合衆国は1.8とあるので、1989年から2020年にかけて、国民1人あたりの軍事費は1.7倍に増加(7割増し)したことになる。

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2020年時点の米ドル換算、1989年から2020年への増加倍率。1.0=変わらず、2020年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2020年時点の米ドル換算、1989年から2020年への増加倍率。1.0=変わらず、2020年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)

ロシアがむしろ減少しているのが驚き。ドイツやイギリス、フランスは微増、日本は1.7倍。インドはやや大きめで4.3倍、サウジアラビアは2.0倍。そして中国は実に18.0倍を示している。これもまた、各国の軍事費動向を推し量る上での指針となるに違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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