高齢者の交通事故死者数の実情を詳しくさぐる(2021年公開版)

↑ 高齢者の運転。事故を起こさないのが何よりなのだが。(写真:アフロ)

警察庁は2021年2月に2020年中の交通事故の状況を精査した報告書「令和2年における交通事故の発生状況などについて」を公開した。これを基に高齢者(65歳以上)の交通事故による死者数の実情を確認する。

次に示すのは高齢者の交通事故における状態別の死者数推移を調べた結果。例えば「自転車乗車中」なら、当事者(高齢者)が自転車に乗車中(=運転中)に事故に遭遇し、亡くなった事例である。

↑ 高齢者(65歳以上)の状態別交通事故死者数(人)
↑ 高齢者(65歳以上)の状態別交通事故死者数(人)

世間一般におけるイメージとしては交通事故なら、当事者が自動車、あるいは自転車運転中の状態が最上位のように思える。しかし実際には歩行中による事故を起因とするものがもっとも多い。次いで自動車乗車中、そして自転車乗車中が上位についている。

グラフ作成は略するものの、高齢者に限って交通事故死者数が多い、そして全体における交通事故死者数の比率増加の要因の一つとされる歩行中の死亡事故や自転車乗車中の死亡事故に関して、高齢者(65歳以上)の法令違反別区分(該当年齢階層人口10万人あたり)を今件資料から確認すると、

●自転車乗車中死者

 ハンドル操作(安全運転義務)…0.16人

 安全不確認(安全運転義務)…0.13人

 交差点安全進行…0.08人

 (他に違反無し…0.12人)

●歩行中死者

 走行車両の直前後(横断違反)…0.29人

 信号無視…0.18人

 横断歩道以外(横断違反)…0.17人

 (他に違反無し…0.87人)

が上位を占めている。高齢者以外の割合とも傾向は大きく異なり(例えば高齢者以外の歩行中による法令違反別区分の最上位は酩酊(酔っ払い状態)などによるものである)、「自分自身の身体能力への過信、思い違い」が死亡事故の引き金の主要因であることが分かる。

自動車などを運転している人なら、横断歩道が無い場所なのにもかかわらず、堂々と道を横断するお年寄りに遭遇し、冷や汗をかいた経験が、一度や二度ならずあるはず。彼ら・彼女らは、「かつて交通量が少なかった時代と同じように(「渡り切るまで車など来ない」)」「以前の若い頃の自分のように素早く」渡れると判断している、または「自動車が来ても人間が歩いているのだから、止まってくれるに違いない」などと判断を下し、横断している場合が多いと考えざるを得ない。あるいはそこまでの思慮すらなく、単に「面倒だから近道をしてしまえ」との思いだけで突っ切ろうとしている可能性もある。

しかし「飛び出すな 車は急に止まれない」の標語の通り、横断中の人間を視界にとらえたドライバーが瞬時にブレーキを踏み込んでも、自動車はすぐに停止できない。結果として上記グラフに「カウント」されるような事態に陥った場合、本人はもちろん家族も、そして半ば巻き添えとなった自動車運転手にも大きな不幸、負担が襲い掛かることになる。

高齢化により高齢者の人口が増加するにつれ、事故対象者の絶対数、そして全体に占める割合でも高齢者が増えてしまうのは、統計学上仕方が無い(例:同じ1%でも100人ならば1人でしかないが、1万人の場合は100人となる)。高齢者の死者「数」の減少が緩やかでしか無い、そして一部階層では増加する動きが生じている理由は、高齢者人口の増加と高齢者の交通事故死者率の高さにある。

次に示すのは「それぞれの」年齢階層における交通事故死者率。たとえば80~84歳は6.47と出ているので(全人口ではなく)80~84歳以上の10万人のうち、2020年では6.47人が交通事故で亡くなったことを意味する。

↑ 人口10万人あたりの交通事故死者数(年齢階層別、人)(2020年)
↑ 人口10万人あたりの交通事故死者数(年齢階層別、人)(2020年)

しかし一方で「絶対数」の増加を「統計学上、仕方ない」で諦めてよいのか、との考え方もある。

高齢者の場合、「カウントされるような事故」の発生起因は上記のようにある程度特定されている。今後はこれらの対策への「これまで以上の」注力も必要となる。まずは徹底した啓蒙活動と、その成果が望める工夫、そして周囲の注意が求められよう。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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