自国選挙での公的機関運営の公正さや投票の自由の確保の実情認識をさぐる(2017~2020年分)
民主主義を支えるのに欠かせない仕組みの一つとして挙げられる選挙だが、その結果は大きな影響力を持つことから、色々な思惑による画策が生じ得る。今回は世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果を基に、自国選挙において選挙に携わる公的機関の運営の公平さや、有権者の投票の自由が確保されているか否かの認識について確認をする。
まずは選挙にたずさわる公的機関の運営に関する公正感。当然公正な運営が求められているのだが、国民の目から見てそれが果たされているか否かを示したもの。日本ならば警察や選挙管理委員会が選挙違反に対して適切な対応をしているか否かの判断だろうか。
選挙にたずさわる公的機関の運営に関する公正感を強く認識できているのはフィンランド、スウェーデン、ドイツ、ニュージーランド、スロベニアなど。逆に値がマイナス値となっている、つまり何らかの不公正な運営をしているのではないか、少なくとも公正感は感じられないとの疑念を抱いているのはイラク、メキシコ、コロンビア、ルーマニア、ブラジル。
色々と注目されているアメリカ合衆国はプラス0.517、日本は0.735。一応公正な運営がされているとの認識ではあるが、少々値が低い感はある。ちなみに日本では「分からない」との回答が21.5%と今回の対象国では最大値を示しており、これが今件の値の足を引っ張った可能性は否定できない。
続いて選挙における有権者に関する問題。有権者が投票する際に、投票先の選別に関して暴力などで脅されているか否か。これは直接的・物理的な暴力に限らず、何らかの抽象的な脅迫行為も該当する。秘密投票制が維持されていれば、このような行為は意味を成さないはずなのだが。
なお今設問ではプラス幅が大きいほど脅されていると考えている人が多く、マイナス幅が大きいほど脅されて投票先を強要されるようなことはない、公正な投票が行われていると認識されていることになる。
投票先に関して何らかの脅しがあるとの認識が多分にあるのはフィリピン、メキシコ、コロンビア。プラス幅はさほど大きくはないが、実情を推し量れる結果には違いない。
逆にマイナス幅が大きい、つまり有権者は脅しなどを受けることなく自分の意思で投票先を決められるとの認識が強いのはドイツ、フィンランド、スイス、スウェーデンなどヨーロッパ地域に多い。日本はマイナス0.998、アメリカ合衆国はマイナス0.821。意外にも日本の方がマイナス幅が大きいが、直近2回の大統領選挙の実情を見ると、結果が示すものに理解できなくもない(実際アメリカ合衆国の数字の詳細を見ると、「ほぼ常に」「おおよそ」を合わせて19.1%に達している。日本は6.0%でしかない)。
選挙にたずさわる公的機関が公正な運営をしなければ選挙の意義はかすんでしまうし、有権者への脅迫行為などで自由な投票を妨害されるのは言語道断な話に違いない。しかし実情としては、少なくとも各国の国民からはそのようなことが生じているとの疑惑、疑念の思いが少なからず(国によって度合いは大きく異なるが)存在していることになる。
関係方面は公正な選挙のために行動するのはもちろんだが、国民自身に公正であると認識されるような姿勢を示してほしいものではある。
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※World Values Survey(世界価値観調査)
世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。
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