海外労働者や他言語で話す人…近所の人なら気になるか否かをさぐる(2017~2020年分)
鎖国をしていない限り、多かれ少なかれどの国にも他国からの移住者や労働者が住居を構え、隣近所に住む可能性が生じる。また他言語を話す人が近くに住むことになるかもしれない。その時人々はいかなる反応を示すだろうか。気にせずごく普通に生活を続け接するのか、それとも警戒感や嫌悪感を抱いてしまうのだろうか。世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果を基に、国ごとの反応を確認していくことにする。
今回焦点を当てる設問は2つ。隣近所に「移民世帯や海外からの労働者世帯」「他言語を話す世帯」がいる状況について、気にしないか、それとも何となくネガティブな意味で気にしてしまうかを答えてもらっている。グラフ中のタイトル表記は「気にする」とあるが、要は警戒感や嫌悪感の類の感情を抱くという意味である。なお一部の国・設問では現在集計中らしく値が非開示の国があるため、設問によって回答国数が異なる形となっている。あるいは(その国の情勢を鑑みて)元から設問が用意されていない可能性がある。
まずは「移民世帯や海外からの労働者世帯」。
もっとも否定的、つまり嫌悪感を抱いているのはトルコで48.1%、次いでイランの41.8%、タイの38.9%、イラクの38.5%。日本は29.1%と3割近く。
一方でブラジルやスウェーデン、ドイツなど、国策として移民政策を推進している国では寛容な意見が多い。もっとも最大値が50%を超えている国は皆無なので、ほぼすべての国で、気にしないとする意見が多数派を占めていることになる。
続いて「他言語」。
イラクが最上位で40.2%、次いでトルコが35.9%、フィリピンが32.2%、イランが31.4%。日本は8.4%に留まっている。
イラクやトルコなどでは比較的高い値を示しているが、それでも半数には届かない。言語に関してはおおよそ宗教と同程度の許容がされているようである。
今件に限らず「世界価値観調査」の設問はおおよそ一般論、あるいは概要的な状況に対する判断を尋ねているため、センシティブな設問では色々と疑問を感じざるを得ない結果が出る場合もある。あくまでも全般的な、傾向としてのもので、実際の判断には個々の状況によって大きく左右されることを留意しなければならない。
一方で例えば移民政策を推奨している国では極めて寛容な結果が出るなど、国全体としての傾向もおおよそ把握できるのも事実である。日本のポジションに関しても、理解ができる値ではないだろうか。
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※World Values Survey(世界価値観調査)
世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。