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責任感や想像力は子供への教育に重要か否か、世界各国の考え方をさぐる(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 想像力は子供の教育に重要な要素なのか。(写真:アフロ)

生物としての本能は別として、人は成長する過程で親をはじめとする多くの人から行動様式を学び、模倣し、経験を得て成長し、人格を形成していく。その成長過程で親の教育方針は大きな影響を及ぼすことになる。それではその方針は、国によって違いが生じるものだろうか。今回は世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果を基に、その実情を確認する。

今回は子供に対する教育指針のうち、責任感と想像力、それぞれの指針について子供に身に付けさせることが重要か否かを答えてもらい、肯定した人の割合を見ていく。

まずは責任感。

↑ 子供に責任感を身に付けさせるのは重要か(重要だと思う人)(2017~2020年)
↑ 子供に責任感を身に付けさせるのは重要か(重要だと思う人)(2017~2020年)

最大の肯定値を示したのは韓国で87.6%。次いでオランダの87.2%、日本は75.3%に達している。低い値はイギリスの44.2%、ニュージーランドの53.2%、ギリシャの54.6%など。とはいえ今回対象となった国ではイギリス以外のすべての国で過半数を超えており、責任感は重要視されていることが分かる。

高低に関する国の傾向のようなものは無い。地域別や過去の社会体制別で高め、低めといった傾向は見出しにくい。もっとも特定国に限れば、「子供に責任感を習得させるのを重視しているのにその国の大人ときたら」や「なるほど、そのぐらいの値だから国全体で」、さらには「低い値だけど国そのものは強い責任感を持っている行動が多いな」との感想を抱く人も少なくあるまい。

続いて想像力。創作などの芸術方面に重要なだけでなく、何か選択を求められるような事態に陥った時に先を見通す、予見するという観点でも重要である。自分の知識、情報から多様な組み合わせを行い、予想を立てる能力に長けていれば、柔軟な対応ができる。

↑ 子供に想像力を身に付けさせるのは重要か(重要だと思う人)(2017~2020年)
↑ 子供に想像力を身に付けさせるのは重要か(重要だと思う人)(2017~2020年)

もっとも値が高いのは韓国で52.4%。次いでスウェーデンの43.8%。両国の教育への熱心さはよく知られたところであり、またスウェーデンでは移民の多さ(=母国語のスウェーデン語ができない子供が多い)もサポート体制の充実を促している。放置をしてしまうと言葉の壁で、教育そのものがその子に与えられなくなってしまう。その社会全体における教育姿勢が、想像力の育成を大切にする点にも表れたのだろう。

次いで日本が入り、オランダ、スペイン、オーストラリア、イギリスが続く。日本は序列上では高い値だが、それが教育制度として体現化されているか否かを考えると、やや不安になる。

逆に低めなのはエジプトやキプロス、フィリピンなど。

今件取り上げた指標はあくまでも子供への教育指針のうちの一部に過ぎず、しかも重点を置いてもその通りに子供が育つとは限らない。さらにいえば保護者の教育姿勢ですら、各指標対象の能力を正しく習得するために役立つわけではない。教える側が曲解している可能性もあれば、子供が曲解して習得してしまう可能性もある。

一方で、言葉の上でのくくりでも、国により教育指針に大きな違いがあるのが確認できるのも事実。各国の対外的な姿勢や国内事案を眺め見た時、あるいは推測を行う際、多分に参考になることだろう。

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※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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