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「人は働かないとなまけ者になる」に賛成するか否か、世界各国の考え方をさぐる(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「人は働かないとなまけ者になる」と思われているのだろうか(素材:ぱくたそ)。

「働かざる者食うべからず」との言い回しがあるが、働かなければ食べていくことはできないのが世の常ではある。しかしながら中には、働かなくても食べていけるような環境に恵まれている人もいる。そのような環境下で働かないでいると、人はなまけ者になってしまうのだろうか。今回はその考え方に関して、世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果を基に、各国の国民単位での認識を確認する。

今回確認するのは「人は働かないでいると怠惰になる」の項目について。原文では「People who don't work turn lazy」であり、老化や病気、ケガなどで働けなくなった人のことを意味しない。働くことに対してどのような考えを持つのか、国単位での考え方の違いが見えてくる結果となっている。

↑ 人は働かないと怠けものになる(強い肯定・肯定-否定・強い否定)(2017~2020年)
↑ 人は働かないと怠けものになる(強い肯定・肯定-否定・強い否定)(2017~2020年)

スウェーデンを除いてプラスであることから、少なくともスウェーデン以外は「働かないと人は怠惰になる」という意見で固まっていることは確かなようだ。

また、全般的に西洋諸国、特に医療福祉制度が整っている国の方が、値が低い感がある。とりわけスウェーデンがマイナスとなっているのが興味深い。「働かなくても怠惰にはならない」と考えている人が多いわけだが、「怠惰」は否定的に使われていることから、「別に働かなくても悪いことではないのでは」という考えが強めなのだろうか。逆に韓国が強いのは、儒教思想の表れかもしれない。

日本はといえば、ちょうど真ん中あたり。勤勉さはそれなりで高くもなく、低くもなく、と判断すればよいのだろうか。

「セーフティネット」という言葉がある。生活にしても雇用にしても「最低限度の保障をする制度」を意味するものだが、賛否両論が繰り広げられているのはご承知の通り。概念的には社会主義・共産主義の全体的システムに近いものがあるのだが、メリットとしては最低限度の保障はされ「得る」ことが挙げられる代わりに、デメリットとして労働意欲そのものが押し下げられてしまう。

要はバランスが大切だ、ということだが、その観点では比較的日本はよい立ち位置にいる気がしてならない。

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※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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