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「自国民か否か」ワークシェアリング意識に関する世界各国の考え方をさぐる(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自国民就業優先は是か非か。(写真:アフロ)

仕事が足りず就業希望者が余る状況下で生じる、特定の属性への優先主義的な考え方。自国民とそうでない人との間において自国民優先を肯定するか否かについて、主要国における考え方の実情を、中長期的に定点観測の形で調査報告している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果を基に確認する。

今回確認するのは一言でまとめると「自国民就業優先意識」。就業機会が限られる場合、他の条件を考慮せず、自国民か否かを判断材料として自国民を優先すべきか。多分にケースバイケースとなるが、一般論として答えてもらった結果が次のグラフ。

選択項目として「強く肯定する」「肯定する」(以上肯定派)「否定する」「強く否定する」(以上否定派)「中立」「分からない」「無回答」が用意されており、どれか一つを選択することになっている(「無回答」は選択する、というよりは結果的なもの)。

この選択肢のうち今回は「強く肯定する」「肯定する」の肯定派を単純に加算して、その値から「否定する」「強く否定する」の否定派の値を引き、同意度合い(DI値)を算出した。つまりこのDI値が大きいほど、その国では該当する意見を強く肯定していることになる。マイナスならば否定的意見の方が多い次第。今件ならばプラス幅が大きいほど自国民を優先すべき、マイナス幅が大きいほど自国民優先での採用はすべきではないとの意見が多数を占めることになる。

↑ 就業機会が限られる場合、自国民を優先すべきである(強い肯定・肯定-否定・強い否定)(2017~2020年)
↑ 就業機会が限られる場合、自国民を優先すべきである(強い肯定・肯定-否定・強い否定)(2017~2020年)

意外と言えば意外、当然と言えば当然ではあるが、多くの国がプラスに振れている。マイナスの値を示しているのは今回対象とした国の中ではスウェーデン、ドイツ、イギリスのみ。

全般的には移民の多い国ほど数字が低い傾向があるように見える。スウェーデンは調査当時では有数の移民国家で、昨今ではさまざまな問題が生じ、物議をかもしているものの、今精査対象国では最大の「自国民優先主義は否定」の姿勢を見せていることに違いはない。

ただし移民の多い国、多民族国家でもプラスの値が大きい国もあり一様に片づけられる問題ではないことが推定される。

日本はプラス側の国の中では真ん中ぐらいのポジション。自国民か否かについては「比較的強く自国民優先であるべきと考えている」と見てよいだろう。

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※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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