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諸外国の人達の「信頼している・していない」組織・制度の実情を表組化でさぐる(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 各国の組織や制度への信頼をグラフ化。(提供:IngramPublishing/イメージマート)

信頼度合いの大きい中国、疑心暗鬼なウクライナなど

諸国の人たちはどのような組織や制度に信頼を寄せているのだろうか。国単位の価値観を中長期的に定点観測の形で調査報告している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果を基に、信頼度合いの合計や表組化などの観点で確認する。

これまでの複数の記事で独自の計算方法を用い、主要国における各組織・制度の信頼度を算出した。例えばアメリカ合衆国における組織・制度への信頼度は次の通り。プラスの方が信頼度合いは高い。

↑ アメリカ合衆国における組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017~2020年)
↑ アメリカ合衆国における組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017~2020年)

そこでまずは、それらの信頼度を単純にすべて足し、主要組織や制度全体に、言い換えれば社会全体に対し、どの程度の信頼を寄せているのかを、相対的にではあるが確認する。

もちろんすべての組織・制度に対する評価が公開されている国に限定されるが、中国は「国連」のみが現時点で非開示状態となっているので、特別に精査対象として加えることにする。

↑ 各国信頼度の合計(2017~2020年)
↑ 各国信頼度の合計(2017~2020年)

世の中には多様な組織・制度があり、今回の調査対象はその一部に過ぎない。その一部だけに対する信頼度を累計しても、社会全体への信服とはずれが生じる可能性はあるが、それでもなおそれぞれの国の算出結果を見ると、大まかにではあるが国の実情が透けて見える。

ウクライナが大きなマイナス値を示しているのは、社会情勢が悪化する事態が進行中なのが主要因。またアメリカ合衆国では主要メディアを巻き込んだ党派性の強い対立が生じているのが要因だろう。加えて全般的に個人の自立感(よく表現すれば個人の主体性、悪く言えば唯我独尊)が強い・強く振る舞える国ほどマイナス値が大きくなる傾向がある。その観点では中国が他国を大きく抜きんでる形でプラスを示しているのも納得はいく(中国では「国連」の値が勘案されていないにもかかわらずこの値である。とはいえ、恐らく中国での「国連」の値はマイナス値であろうから、実質的にはもう少し低くなるはず)。

信頼度の上位陣・下位陣を表組化

続いて過去の記事の集計結果を用い、各国の組織・制度に対する上位・下位3位をリストアップする。色が濃い方が順位が高い。なお、国の並びは信頼度合計の高い順となっている。

↑ 各国の信頼度上位3位(2017~2020年)
↑ 各国の信頼度上位3位(2017~2020年)

↑ 各国の信頼度下位3位(2017~2020年)
↑ 各国の信頼度下位3位(2017~2020年)

目に留まるのは「国軍」「警察」への信頼度が高い国が多いこと。そして「国軍」がトップ3に入っていない国(今回は韓国のみ)では、「大学」がトップ3に入っている。国家の実力行使組織への反発感が、そのまま自由自治的な場の代表であり、未来を担いうる人たちの通う場への期待と信頼につながっているのかもしれない。また「宗教団体」がロシアで第3位、ウクライナで第2位についていることや、中国における「政府」「国会」のトップ3入りが稀有な事例であることも分かる。

また、下位一覧では、「政党」「国会」など政治関連の機関への信頼度の低さが万国共通であることが分かる(その意味では中国はやはり特殊事例)。また、日本や中国における「宗教団体」への嫌悪感が、むしろ世界全体では稀なパターンであることも見て取れる。

複数の角度から各国組織・制度への国民の信頼度を確認したが、、元々「世界価値観調査」からの数字であることから、個々の国の価値観が色濃くにじみでている結果となっている。計測時期は2017~2020年だが、実際の調査は国々で数年の違いがあり、また現時点とも差異が生じている可能性は多分にあるが、根底に流れる意識にそう大きな違いはないだろう。

各国の動向を見る際に、このような「国の価値観」を認識した上でチェックをすると、これまでとは違った視点で物事を考えられるようになるかもしれない。

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※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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