高校生や大学生で自宅外通学をしている人の実情をさぐる(2020年公開版)
大学、さらには高校においても、自分の望む学校に通うために自宅を出て、下宿やアパートを借りての一人暮らしを始めるケースがある。そのような自宅外通学者の実情を、日本政策金融公庫が2020年10月に発表した教育費に関する調査(※)の内容から確認する。
まずは今調査対象母集団(高校生以上の子供を持つ保護者)の世帯に自宅外通学者がいるか否か。直近の2020年では72.6%がいないと回答している。つまり27.4%は自宅外通学者がいる。
授業料の高騰を受け教育費がかさむため、割安で済む自宅通学者が増えているのではとの話も聞かれるが、今調査に限ればそのような動きは見出しがたい。ちなみに今調査では自宅外通学者への年間の仕送り平均額は90.3万円。月換算で約7.5万円。
元々子供が2人以上いる世帯が少ないこともあるが、自宅外通学者がいる世帯でも大半は1人のみ。2人や3人以上の世帯はごく少数となっている。
この1世帯あたりの自宅外通学者数について、地域傾向を見るべく都道府県別に配したのが次の地図。色が濃い地域ほど自宅外通学者数が多いように着色している。
ちなみにもっとも多いのは島根県の0.77人、次いで香川県の0.67人、福島県の0.62人。もっとも少ないのは千葉県の0.10人、次いで大阪府と東京都の0.14人となっている。
印象としては京阪神や東京都とその近辺では少なく、地方では多い傾向にある。宮城県が少ない(0.16人)のはイレギュラーだろうか。報告書では「地方ほど多く、都市部ほど少ない」と説明があり、印象が間違っていないことが分かる。
これはもちろん、地方在住の人は都市部の大学などで学ぶことを望み、通学では無理と判断するケースが多いからだと推測される。自分の住む地域に大学はあるものの、自分が学びたい学部が無かったり、あったとしても環境や方向性などで合わないと判断したのだろう。また、大学などで学ぶのなら、都市部の有名大学でという憧れを抱いている場合もあるに違いない(一人暮らしそのものが憧れの対象となっていることもありうる)。
自宅外通学は家計の負担になることは間違いない。負担を減らすには大学の地方分散をとの考えも出てくるかもしれない。もっとも単に大学を地方に移す・新設したところで、その大学が魅力的な場にならなければ、学生を集めることはかなわない。また、大学への自宅外通学が大義名分で、都市部での一人暮らしが実の目的の人には、大学を地方へ分散しても、あまり効果はないだろう。
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※教育費に関する調査
直近年分となる2020年分は、2020年9月7日から14日にかけて64歳以下の男女で高校以上に在学中である子供を持つ保護者に対し、インターネット経由で行われたもので、有効回答数は4700人。各都道府県別で100人ずつ。
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