巣ごもり化の影響か、各局とも上昇…主要テレビ局の直近視聴率をさぐる(2021年3月期上期)

↑ 家族団らんに欠かせない存在のテレビ。その視聴率は。(写真:アフロ)

全日もゴールデンも日テレがトップ

テレビ局の番組や局のメディア力のすう勢を推し量るのに、一番明確な指標が(世帯)視聴率。キー局における最新となる2021年3月期(2020年4月~2021年3月)における上期の視聴率を確認する。

各種データはTBSホールディングス・決算説明会資料集ページ上で発表された「2021年3月期 決算資料」などからのもの。なお「キー局」と表現した場合、一般的にはNHKは含まれないが、よい機会でもあるので合わせてグラフに収める。

なお今回分から多くの局の発表資料ではHUT(世帯視聴率、Households Using Television)ではなくPUT(個人視聴率、Persons Using Television)を用いるようになったが、連続性を鑑み今記事では引き続きHUTを用いる。以後の記事内表記・グラフ内表記も断りがない限り「視聴率」は「世帯視聴率」を意味する。

↑ 主要局世帯視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2021年3月期・上期)
↑ 主要局世帯視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2021年3月期・上期)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているが、他の4局と比べれば放送内容の特異性(比較的経済関連の内容が多い)の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、フジテレビが一段低く、TBSとNHKがやや低め、日本テレビとテレビ朝日が高めのポジションについており、3階層状態にある。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19~22時)とプライムタイム(19~23時)。その双方で10%を切っているのは(テレビ東京以外では)TBSとフジテレビ。双方とも10%以上は日本テレビとテレビ朝日とNHK。

今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。ゴールデンタイムとプライムタイムの差異が他局動向と比べるとかなり大きい。これは以前からの傾向で、ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、その違いとなる時間帯、22~23時における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっていることになる。もっともこれは各テレビ局の番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方のない面もある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見ると、トップは日本テレビ、次いでNHK、そしてテレビ朝日、TBS、フジテレビが続く。プライムタイムで比較すると、日本テレビとテレビ朝日が同率でトップとなり、次いでNHK、TBS、フジテレビの順となる。NHKのプライムタイムでのいまいち度合いは直上にその理由を記した通りだが、プライムタイムではTBSとテレビ朝日において、ゴールデンタイムを超える値を示しているのは意外かもしれない。22~23時の時間帯で放送される各局の人気番組のすう勢が、そのままこの差に表れるともいえる。テレビ朝日の場合は「報道ステーション」がメイン、後は各種映画や特番、ワイド劇場となるのだろう。TBSは22時から放送の火曜ドラマや「櫻井・有吉THE夜会」だろうか。

前年同期からの変化を確認

視聴率の変移を前年同期(2020年3月期・上期)との比較で表すと次のようになる。

↑主要局世帯視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2019年3月期・上期)
↑主要局世帯視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2019年3月期・上期)

今期は全局が全時間区分においてプラス、あるいはプラスマイナスゼロとなり、視聴率が減少した局・時間区分は皆無となった。非常に珍しい現象だが、恐らくは新型コロナウイルスの流行に伴う巣ごもり化がテレビ視聴の観点では局を問わず、プラスへと働いたのだろう。

プラス幅を見比べると、日本テレビやテレビ朝日、テレビ東京は各時間区分でそれなりに伸びているのに対し、TBSでは全日のみが大いに健闘、NHKはゴールデンタイムとプライムタイムで大きく伸びている。巣ごもり化した人がどのような番組を好むのか、放送内容や番組構成の傾向が視聴率の伸び方に反映されたようで興味深い。

全局の中で伸び方が今一つなフジテレビだが、直近の同社決算説明会の公開資料では具体的な説明は特に無し(視聴率の掲載そのものすら見当たらない)。決算報告書では「スポーツイベントなどの単発番組が中止や延期になった」「イベントや映画が中止、延期となり」など視聴率にかかわる文言が見られるが、具体的な説明は見つからない。今後に関しては新型コロナウイルスの流行という特異事情に伴い定量目標を取り下げるとともに、「中期経営計画で掲げている収益力・経営基盤の強化の取り組みを継続するとともにメディア環境の変化に対応し構造改革を実施」とある。

他方、財務関連では放送事業収入が前年同期比でマイナス18.3%だったのに対し、番組制作費がマイナス22.5%と収入以上の減少を示している。制作費が番組の質や視聴率に直接影響するとは限らないが、気になる動きには違いない。

この数年は各局ともターニングポイントを迎えている気配を示している。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が継続している。単発のヒーロー的番組やイベントのおかげで一時的な盛り返しを見せることはあっても、根本的な体質、視聴者への姿勢の部分がしっかりとしていないと、次第に低迷さが顕著になる。

中にはそのドーピング的効果に味を占め、魅惑に取りつかれ、繰り返しその効果を望んでいるような行動を示す局も見受けられるが、「待ちぼうけ」の歌にある通り、常に切り株にうさぎがやってくるとは限らない。それを期待するどころか、切り株を増やすべく樹の伐採を繰り返し、かえって地道な努力の成果である果実の収穫量を減らすような動きすら見受けられるのは残念な話(昨今の「報道」番組では特にその傾向が見受けられる)。

掲載視聴率をHUTからPUTに切り替える局が出てきたのは、世帯人数の少人数化に加え、テレビの観賞スタイルが「家族皆で」から「個人で」が主流になりつつあるとの認識が、局側で生じて来たことを意味するのかもしれない。

■関連記事:

【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】

【テレビアニメを観ている人は49.7%…40代と50代にまたがる大きな世代間格差の「壁」】

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。