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日本在住の外国人に行政の情報などを伝えるために求められている取り組みをさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 鉄道駅構内の注意表記。英語併記の他に分かりやすい絵でも説明(筆者撮影)。

大きな災害やその予兆があるたびに問題視される日本在住の外国人に対する問題の一つとして、災害や行政の情報など、日常生活を営むのには欠かせない情報を、どのようにして正しく、適切に、そして効率的に伝えていくべきかというのがある。外国人の決して少なくない人達は日本語の読み書きや会話が困難であり、ある程度の理解はあっても日本語独特の言い回しや慣用句の類までは知らないことが多い。例えば「余震」という言葉の意味をどれほどの日本在住の外国人は理解し、対応できるだろうか。

そこで、日本在住の外国人に対して災害や行政の情報などを伝えるためにどのような取り組みが必要だと思うかについて、文化庁が2020年9月に発表した令和元年度版の「国語に関する世論調査」(※)の結果概要から確認する。

今件について複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 日本在住の外国人に対して災害や行政の情報などを伝えるためにどのような取り組みが必要だと思うか(複数回答)(2020年)
↑ 日本在住の外国人に対して災害や行政の情報などを伝えるためにどのような取り組みが必要だと思うか(複数回答)(2020年)

もっとも多くの同意を得られた選択肢は「さまざまな国の言葉で情報提供をする」で58.1%。交通標識や自動販売機ではお馴染みのスタイルで、日本語以外に英語、中国語、韓国語などが併記されていることが多い。一番手っ取り早く技術もさほど必要としない手法だが、用いた言語の分だけ表示時間や掲載場所を取ることになり、一つの言語の認識機会が減ってしまうという弱点がある。例えば切替式で日本語・英語・中国語・韓国語を用いて案内掲示をした場合、日本語による表示は1分間のうち15秒に過ぎなくなる。一度見逃すと45秒は待たされることになる。

次いで多いのは「やさしい日本語で分かりやすく伝える」で46.3%。どのような手段で伝えるかの指定が無いので口頭によるものか文章や放送で伝えるものかは定められていないが、いずれの手段にせよ内容が把握できない言葉ならばいくら上手く受け止めても意味がない。先の「余震」が好例だが、テレビや行政放送で「余震に備えましょう」と言われても、「余震」の意味が分からなければ何に備える必要があるのか理解ができない。

「外国人が日本語能力を身に付けるための学習環境を整える」「外国人が自主的に日本語を学ぶことが必要」は外国人自身が日本語を習得してもらうとの観点では同じだが、行政などが環境を整備するのか、自主的に行動してもらうのかに違いがある。今回の調査の限りでは、学びやすい環境を整備して習得のハードルを低くするべきだとの意見の方が多いようだ。

今件の要望は具体的には行政や企業に対するものとなるが、どの選択肢がベストなのかはケースバイケース。多言語による切替表示における特定言語表示時間の減少の例にもあるように、改善をした結果既存のサービスが大きな影響を受けてしまうこともある。バランス調整が必要なだけに、難しい問題には違いない。

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※国語に関する世論調査

令和元年度版は16歳以上の男女に対して個別面接調査方式で行われたもので、調査の有効回答数は1994人。有効回答の属性別構成比は非公開。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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