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新型コロナウイルスの流行は熱中症の発症にどのような影響を与えたのかをさぐる(発生場所編)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 巣ごもり化で外出機会は減り、熱中症の発症にも影響が。(写真:つのだよしお/アフロ)

現在もなお流行中の新型コロナウイルス。その新型コロナウイルスの流行が熱中症の発症にどのような影響を与えたのかについて、消防庁が発表している熱中症による救急搬送人員数を基に、発生場所の観点から推測する。

次に示すのはどのような場所で熱中症が発生し救急車で運ばれるような状況になったかを示したもの。2020年の実情(6~8月)と、2017~2019年の3年分の実情の平均値(単年では気象状況などによるぶれが生じやすいため)の差を算出しグラフ化した。

↑ 熱中症による救急搬送人員の発生場所(月別、人員数)(2020年の値から2017~2019年の平均値を引いたもの)
↑ 熱中症による救急搬送人員の発生場所(月別、人員数)(2020年の値から2017~2019年の平均値を引いたもの)

2018年は記録的な猛暑のために7月から搬送人員数も大幅に増えていたこと、2020年の7月は「令和2年7月豪雨」の発生などで降水量が多く、日照時間・気温ともに平年に比べてかなり低い値を示したこと(【7月の天候(気象庁)】)から、7月の値が大きなマイナス、つまり2020年の値が少なくなってしまっている。他方2020年8月は記録的な高温を示したこと(【8月の天候(気象庁)】)から大きなプラス、つまり2020年の値が多くなっている。一方で多くなった値を見ると、「住居」「道路」が多分に増加していることも確認できる。

一方、2017~2019年の平均値と2020年それぞれについて、全体比を算出したのが次のグラフ。

↑ 熱中症による救急搬送人員の発生場所(月別、全体比)(2017~2019年の平均値)
↑ 熱中症による救急搬送人員の発生場所(月別、全体比)(2017~2019年の平均値)
↑ 熱中症による救急搬送人員の発生場所(月別、全体比)(2020年)
↑ 熱中症による救急搬送人員の発生場所(月別、全体比)(2020年)

両者を比較すると「教育機関」「公衆(屋内)」「公衆(屋外)」では2020年の方が小さく、「道路」では2020年の方が大きくなっているのが確認できる。前者は足を運ぶ機会が少なかったため必然的に熱中症を発症する機会も減った、後者はマスク着用などによる負担が発症リスクを高めた結果だと推測できる。

また「住居」は6月と8月に限れば2020年の方が大きな値だが、これは巣ごもり化によるところが大きいのだろう。他方7月では2020年の方が小さいが、これは2018年の猛暑と2020年7月における冷夏によるものと思われる。

来年の夏も同様の状況が続いているとは思えないが、一部の社会様式は新型コロナウイルスのワクチンや治療薬が開発された後でも継続することだろう。熱中症の発症リスクも今年同様、過去とは違いを見せるようになるかもしれない。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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