Yahoo!ニュース

新型コロナウイルスによる家庭支出への影響をさぐる(単身世帯・小区分編)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 特別定額給付金を使い、エアコンを設置した世帯も多いのかも。(写真:maruco/イメージマート)

新型コロナウイルスの流行は人々の生活に大きな変化をおよぼしている。家庭における消費傾向にはどのような影響が生じているのか。単身世帯における変化を、家計調査の小区分品目(具体的な品目名区分)の観点から確認する。

次以降に示すのは単身世帯での2020年1~3月期と2020年4~6月期における、前年同期比の区分単位での支出金額の変化動向。分量の変化の観点での勘案も必要だとは思われるが、分量は非公開の品目が多数存在するため、今回は支出金額のみでの精査とする。

また、取り扱う対象は幅が50%以上のものに限定する(すべてを対象とするのには数が多すぎる)。なお品目の特性により元々の金額が小さすぎて比率が極端になったものや、ゼロがあるために計算が不可能になった品目は除外している。

まずは2020年1~3月期。

↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年1~3月期)
↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年1~3月期)
↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年1~3月期)
↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年1~3月期)

ベッドや身の回り用品関連サービスなどが大きく増加しているが、高齢者の用品だろうか。動物病院代や自動車教習料、歯科診療代などが増加しているのは、4月以降の新型コロナウイルスの流行による影響が大きなものとなる前に駆け込み的にし終えておこうとの思惑が働いたのかもしれない。また他の通信機器(電話機、無線装置、Wi-Fiルーターなど)やパソコンも増えており、自宅業務の環境整備の動きもあるように見える。

他方、食器戸棚やエアコン、電気冷蔵庫のような家具用品、旅行関係、自動車関係が大きく減っている。家具用品は二人以上世帯では増加しており、逆の動きを示しているのは興味深い。一人暮らしだから家具などにはあまり関心が生じないということなのだろうか。

続いて2020年4~6月期。影響が大きくなったため、プラスもマイナスも品目が多数に上ったことから、グラフのスタイルも変更している。つまり2020年1~3月期と比べても、大きな変化が生じたということだ。

↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年4~6月期)
↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年4~6月期)
↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年4~6月期)
↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年4~6月期)

特別定額給付金による特需が生じているようで、比較的高額な品目が大きく増えている。祭具・墓石が大きな増加を示しているのは、高齢者によるところが大きいのだろう。他方、子供用下着類の増加は孫などへのプレゼントだろうか(単身世帯を対象にしているので、回答者の世帯には回答者自身以外はいない)。保健用消耗品はマスクなどが該当するため、ある程度の量を買い込んだものと考えられる。同時に前年同期ではマスクの必要性はほとんど無かったはずなので、その分大きな増加となった次第である。

他方、マイナスではスポーツ観覧料や外国パック旅行費、パック旅行費など旅行関係が軒並み大きな減少。他にも外での娯楽やその関連品が多数目に留まる。映画・演劇などの入場料はマイナス92.7%、航空運賃はマイナス90.1%、遊園地入場・乗り物代がマイナス88.8%、文化施設入場料がマイナス88.6%など、巣ごもり化による外出忌避の実情が透けて見える。

今件はあくまでも平均的な単身世帯における支出金額の動向に過ぎず、さまざまな環境の違いにより実際の支出金額は世帯ごとに異なってくる。とはいえ、新型コロナウイルスの影響で多数の品目の需要が減った、あるいは増えた実情がうかがい知れる。各業界団体が発表している業界全体の売上動向が、うそ偽りのない切実な実情を示すものであることが改めて理解できる値に違いない。

一部項目における、明らかに高齢者の主導によるものと思われる動きを見るに、単身高齢世帯に限定した支出金額の実情を確認したいところではあるが、品目分類の区分では年齢階層別は年単位でしか計測されていない。残念な話ではある。

■関連記事:

【新型コロナウイルスでの買い占め騒動の実情をグラフ化してみる(世帯種類別編)】

【新型コロナウイルスでの買い占め騒動の実情をグラフ化してみる(日々の購入動向編)】

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事