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発電量順位は米仏中露韓…各国の原発による発電量の実情をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 原発による発電量が多いのはどこの国だろうか。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

トップは米国、次いでフランス、中国

生活の維持に欠かせない電力を供給する、主要発電方式の一つ、原子力発電。世界におけるその発電量の実情を、国際石油資本BP社が毎年発行しているエネルギー白書「Statistical Review of World Energy」の公開値を基に確認する。

今件は基本として「自国内で発電=消費した電力」に限定している。例えばフランスでは電力の販売を自国産業の一環と見なしており、自国内の多数の原発で大量の電力を生み出し、周辺各国に輸出しているが、この場合輸入先(好例としてイタリア)ではこの値は「原発由来の電力消費」としては勘案されない。あくまでも自国内で生み出された電力のみの話。

まずは直近2019年における発電・消費量。アメリカ合衆国が群を抜いて多い。なお単位のEJ(エクサジュール)はJ(ジュール)の10の18乗を意味する。どれぐらいのエネルギーかというと、例えば東日本大震災のマグニチュードは9.0だが、その際に放出されたエネルギー総量は2.0EJとされている。

↑ 原子力発電所発電による電力消費量(国内電力供給のみ、EJ)(2019年)
↑ 原子力発電所発電による電力消費量(国内電力供給のみ、EJ)(2019年)

続いて電力売り手としても名を知られているフランス、そして中国が続く。その次にロシア、韓国、カナダ、ウクライナ、ドイツが名を連ねている。普段よく耳にする国以外でも、小規模ながらも発電をしていることに「え、あの国も?」と驚く人も少なくあるまい。

そして日本だが、2011年の震災に絡んだ政治的要因もあり、発電量は大幅に縮小。2010年の2.74EJから2013年は0.13EJ、そして2014年ではついにゼロEJとなった。2015年以降は再び発電を始めているが、直近2019年ではわずか0.59EJでしかない。量的にはドイツやスウェーデンなどより少なく、スペインやイギリスなどより多い。

経年変化はどうだろうか

次いでこの値を1997年までさかのぼり、いくつかの注目すべき国について逐次確認をしたものをグラフ化する。主要国の原発政策・エネルギー政策がすけて見えてくる。

↑ 原子力発電所発電による電力消費量(主要国、国内電力供給のみ、EJ)
↑ 原子力発電所発電による電力消費量(主要国、国内電力供給のみ、EJ)

アメリカ合衆国は前世紀末までは急速な伸びを見せていたが、今世紀に入ってからほぼ横ばいに推移している。フランスも状況としては似たようなもので、増やそうという雰囲気が無ければ、減らす思惑も見受けられない。一方でロシア、中国は確実に増加傾向にある。特に中国は積極的に増設、新設を続けており、猛烈な勢いを示している。2016年にはロシアを追い抜き、アメリカ合衆国、フランスに続き世界第3位となった。このままのペースなら、あと数年で中国とフランスの順位は入れ替わるだろう。

日本はといえばアメリカ合衆国・フランスよりも早い時期、前世紀末あたりから打ち止め、漸減傾向を示している。さらに2011年以降は大きな下げを継続し、グラフそのもののバランスを崩す形となっている。これは言うまでも無く震災とそれに続く「要請」などをはじめとする、政治・行政上の混乱の結果。2014年は上記にある通り、絶対量の上でもゼロとなってしまった。2015年は再稼働を果たし、ほんのわずかだが値を示し、その後も増加を示しているが、2011年より前に比べればまだ微細な量でしかない。

最初のグラフに挙げた国は全部で31の国や地域だが、白書には微量・不明な発電量のものは未記載、あるいは「その他の国」でまとめられている。また、存在はしているものの稼働していない国、これから建設を始める国もある。

主要国ではどの国においても、エネルギー政策の柱の一つとして挙げられている原子力発電。日本の動向はもちろんだが、漸増を続ける中国やロシア、そして電力そのものを輸出する施策を継続しているフランスや、シェールガス・オイルの開発でエネルギーに関する方針に変化が生じているアメリカ合衆国の挙動も気になるところ。2020年以降の動きも、逐次確認していくことにしよう。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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