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パートやアルバイトなどの短時間労働者の平均賃金の実情をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ コンビニのアルバイトのような短時間労働者の賃金は平均でどれぐらいだろうか。(写真:アフロ)

正規社員をはじめとしたフルタイム出勤の労働者と異なり、パートやアルバイトのように1日の労働時間が短い、あるいは1週間あたりの労働日数が少ない労働者のことを「短時間労働者」と呼ぶ。この立ち位置にある就労者はフルタイムの労働者と比べ賃金は低く抑えられており、時給制が採用されている場合が多い。今回は厚生労働省が2020年3月に発表した、賃金関連の情報を集約した年ベースでの調査「賃金構造基本統計調査」の報告書を基に、短時間労働者の平均賃金の確認を行う。

まず言葉の定義を確認しておく。

↑ 雇用形態関連の分類。引用した図では「正社員・正職員」と表現されているのは「正規社員」を意味する(賃金構造基本統計調査の結果報告書から引用)。
↑ 雇用形態関連の分類。引用した図では「正社員・正職員」と表現されているのは「正規社員」を意味する(賃金構造基本統計調査の結果報告書から引用)。

・常用労働者…期間を定めずに雇われているか、1か月以上の期間を定めて雇われている労働者。

・一般労働者…短時間労働者以外の労働者。

・短時間労働者…同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、または1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者。

「短時間労働者」は、定義の上では「同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、あるいは1日の所定労働時間が同じでも、1週の所定労働日数が少ない労働者」を意味する。例えば「就業日はフルタイムでの出勤だが、出勤日は週3日」「就業日は一般労働者と同じ平日すべてだが、午後のみの出勤」の場合は「短時間労働者」に該当する。また契約社員の大部分は正規社員と同じ時間帯で働くことから「一般労働者」に該当し、今回の「短時間労働者」には該当しない。

パートやアルバイトの時給に関する話でよく取り上げられるのが、最低賃金制度と最低賃金法。これは都道府県別・産業別で時給単位の最低賃金を法的に定めたもの。例えば東京都の場合は時給1013円(2019年10月時点)となっている。

直近となる2019年時点での男女・年齢階層別の短時間労働者における平均賃金(時給)をグラフ化したのが次の図。全体では男性1207円、女性1127円。全体的に女性より男性の方がいくぶん高い金額である。

↑ 短時間労働者の1時間あたり賃金(年齢階層別・男女別、円)(2019年)
↑ 短時間労働者の1時間あたり賃金(年齢階層別・男女別、円)(2019年)

また、男性では30代前半まで大きく上昇した後はおおよそ横ばい、60代前半でいくぶん持ち上がりの気配を見せているが、女性は30代前半で頭打ちとなり、それ以降は年齢とともに漸減している。男女別のパート・アルバイトの需要の違いにもよるが、年を経るに連れて就業可能なパートなどの産業・職種の、男女における違いの表れともいえる(同一職種での比較ではないことに注意。また仮に同一の産業・職種での比較においても、男女で就労内容は異なる場合が多い)。

前年2018年からの額面変移を見たのが次のグラフ。

↑ 短時間労働者の1時間あたり賃金(前年比、年齢階層別・男女別)(2019年)
↑ 短時間労働者の1時間あたり賃金(前年比、年齢階層別・男女別)(2019年)

男女ともおおよその年齢階層で前年比プラスを示しているしている。マイナスなのは男性の20代後半と50代前半のみ。男女ともに19歳以下、30代から40代、60代で大きめのプラスが出ており、年齢階層によって賃金の上がり方≒労働力の需要に差が生じていることが分かる。すべての年齢階層で押しなべて賃金が上がる≒人手が足りないわけではない。

参考までに男女別・主な産業別の平均賃金、および去年からの変移(金額)を挙げておく。

↑ 短時間労働者の1時間あたり賃金(主な産業別・男女別、円)(2019年)
↑ 短時間労働者の1時間あたり賃金(主な産業別・男女別、円)(2019年)
↑ 短時間労働者の1時間あたり賃金(前年比、主な産業別・男女別、円)(2019年)
↑ 短時間労働者の1時間あたり賃金(前年比、主な産業別・男女別、円)(2019年)

男性は卸売・小売業や宿泊・飲食サービス業がやや低めだが、それ以外はおおよそ1200円前後で横並び。この低めの産業はいずれも人手不足の深刻化が叫ばれていることを思い起こせば、賃金水準がまだ労働力需給状況の実情に追いついていないのが一因とも考えられる。女性では医療・福祉が飛びぬけているが、それ以外はほぼ横並び。業務の実情を考えれば、医療・福祉はこれでもまだ水準としては低い感はある。

前年比の動向では男女を問わずの製造業、女性の医療・福祉の大幅な増加が目に留まる。いずれも深刻な人手不足が伝えられていることもあり、賃金の上乗せによる人手の確保に企業が躍起になっているのがうかがえる。他方男性のサービス業(他に分類されないもの。例えば速記・ワープロ入力、ビルの保守や清掃業、警備業など)がマイナスを示しているのは気になるところ。労働力の需要は大きいはずなのだが。

なおこれらの値はあくまでも全国平均であり、地域によって差があること、さらには上記で触れている通り最低賃金法との兼ね合わせもある(今回の平均賃金は当然に最低賃金を上回っているが)ことを忘れてはならない。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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