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「日本は安保理の常任理事国入りをすべき」米有識者の78%が賛成(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 安保理の常任理事国はそれなりの権限を持つものではあるが。(写真:ロイター/アフロ)

「日本の常任理事国入り」に賛成するアメリカ合衆国有識者は78%

日本が安全保障理事会における常任理事国入りするのを望む声は、米国ではどれほどの大きさなのだろうか。その実情を外務省が2020年3月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。

国際連合の主要機関の一つ、安全保障理事会(安保理)は、第二次世界大戦における戦勝大国のアメリカ合衆国・ロシア(かつてはソ連邦)・イギリス・フランス・中国で構成される常任理事国と、非常任の理事国10か国(2年毎に改選)で構成されている。今世紀に入ってから世界情勢の変化に伴い、前者の常任理事国について、数か国を追加すべきではとの議論が持ち上がっている。

これに絡み、日本が新たに国連安保理の常任理事国となるべきだと思うか否かについて、今調査対象母集団の有識者に聞いた結果が次のグラフ。2007年度から問い合わせの対象としているので、グラフも2007年度以降のみとなっている。

↑ 日本が新たに国連安保理の常任理事国となるべきだと思うか(有識者)
↑ 日本が新たに国連安保理の常任理事国となるべきだと思うか(有識者)

直近2019年度においては78%が同意を示し、反対意見は14%に留まっている。2013年度以降は調査機関の変更とともに内部的な調査仕様の変更が考えられるため、一概に連続した結果として比較するのはいくぶんリスクが高くなるが、2013年度以降は反対意見が減少し、その分賛成意見と回答留保派が増える傾向にある。

直近の2019年度では賛成派が前年度比で増える一方で反対派は2%ポイント減少。賛成派の値はこれまでの調査の限りでは最大値を示す形となった。

反対する人、賛成する人、それぞれの理由

日本の常任理事国入りに賛成する人、反対する人たちは、どのような理由でそのジャッジを示したのか。それぞれの派の人限定で、選択肢の中から当てはまる理由を複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。

↑ 日本の国連安保理の常任理事国入りに賛成・反対する理由(有識者、複数回答、それぞれの回答者限定)
↑ 日本の国連安保理の常任理事国入りに賛成・反対する理由(有識者、複数回答、それぞれの回答者限定)

第一印象としては、賛成派の方が理由が多数に及ぶこと。回答率がいずれも高い結果となっている。また、賛成派では明確な「日本だからこそ」との理由が上位を占めているものの、反対派では「日本にOKを出すと、同時に(具体的国名は掲げられていないが)『この国はマズイだろ』的な国も安保理入りを求めてくる、せざるを得なくなる可能性が生じてしまう」「そもそも増やすべきでは無いから」といった、日本とは関係のないレベルでの話が上位についている(「日本はPKOや多国籍軍などへの人的貢献が足りないから」との意見もあるが)。日本の資質そのものに問題があるのではなく、環境上から否定している場合が多い。今件調査に限れば、そのような解釈をして問題はないだろう。

もっとも今件はアメリカ合衆国の有識者に限った意見の集約によるもの。アメリカ合衆国全体としてはどのような意見となるのかまでは分からず、さらに当然、他国の動向も大きく影響する。その上、安保理、さらには国連そのものの存在意義が大義名分以上のものでは無くなっているとの指摘も見受けられる。

各国のパワーバランスをはじめとした国際情勢の大きな変容が無い限り、今後も日本をはじめとした複数国が国連安保理の常任理事国入りを求め、それに関する論議が繰り広げられるといった状況が継続するのみで、情勢そのものは大きな前進も後退も無さそうだ。

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※米国における対日世論調査

直近分は外務省がハリス社に委託し、アメリカ合衆国内において電話により2019年11月に実施されたもので、有効回答数は一般人1015人(18歳以上)・有識者200人(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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