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尖閣諸島を何で知った? 知っている人の93.0%がテレビやラジオ経由(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 尖閣諸島問題はさまざまな方法で告知が行われているが。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

尖閣諸島はテレビやラジオ経由の認知が圧倒的

内閣府は2019年12月、尖閣諸島に関する世論調査(※)の結果概要を発表した。その公開資料から尖閣諸島にかかわる情報の取得ルートについて確認する。

尖閣諸島は行政的には沖縄県石垣市の一部であり、南西諸島西端に位置する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬などから成る島々の総称。戦後発効したサンフランシスコ講和条約で国際的に日本領帰属として確定しており、歴史的にも国際法上も疑うことなく、日本固有の領土である。ところが1960年代後半に東シナ海で石油埋蔵の可能性があることが指摘されて「以降」、中国や台湾が領有権を主張し始め、外圧や実力行使を繰り返している。

なお現時点ではすべてが無人島で、久場島(および周辺小島)は私有地、その他は国有地となっている。

↑ 尖閣諸島の位置(外務省・日本の領土をめぐる情勢内尖閣諸島の専用ページより)
↑ 尖閣諸島の位置(外務省・日本の領土をめぐる情勢内尖閣諸島の専用ページより)

今調査対象母集団では尖閣諸島を知っていた人は90.0%に達していた。

↑ 「尖閣諸島」と総称される島々を知っているか
↑ 「尖閣諸島」と総称される島々を知っているか

この「知っていた人」に、どのような経路で知るに至ったかを尋ねた結果が次のグラフ。圧倒的に「テレビ・ラジオ」が多く93.0%、次いで「新聞」が55.4%。いわゆる4マス経由で知った人が多数に及んでいる。なお空白部分は該当年でその調査項目が存在しなかったことを意味する。

↑ 「尖閣諸島」の認知経路(複数回答、知っていた人限定)
↑ 「尖閣諸島」の認知経路(複数回答、知っていた人限定)

同じ4マスでも「テレビ・ラジオ」のような電波媒体系の効果は大きく、紙媒体系の「新聞」は小さなものとなっている。また同じ紙媒体系でも報道色の薄い「雑誌・書籍」は、ひときわ回答の値が低い。

もっともこれは雑誌や書籍の場合には、掲載される機会そのものが少ないのに加え、記事掲載誌がある程度絞られてしまい、「他の記事に合わせてついでに」との機会があまりないのが原因だと考えられる(例えば週刊漫画雑誌に、いきなり尖閣諸島問題の特集記事が何十ページにもわたり掲載されれば、よほど上手い切り口でない限り、違和感を覚える人が多数に上るはずだ)。一方テレビやラジオ、新聞の場合は、尖閣諸島問題そのものだけを視聴するのではなく、全般的に利用する中で、併せて見聞きして知ったことが想定される。

インターネット関連の情報は13.4%、政府のインターネット情報にいたっては3.0%でしかない。解説しているサイトが比較的少ないことも一因だが、インターネットの情報はあまり公知には役立っていない現状が再確認できる。

今後の啓蒙にも期待がかかるテレビ

テレビやラジオ、新聞経由で認知した人が多いこともあり、今後の啓蒙に求められる取り組み方法においても、テレビや新聞に対する期待は大きい。

↑ 「尖閣諸島」への関心を高めるためにどのような取り組みが必要と思うか(複数回答)
↑ 「尖閣諸島」への関心を高めるためにどのような取り組みが必要と思うか(複数回答)

「テレビ・ラジオ番組や新聞を利用した詳細な情報提供」を期待する声は8割近く。見方を変えると、現状の広報・放送量では啓蒙としてまだ足りない、さらに質・量ともに必要であるとの認識が強いと解釈ができる。

興味深いのは「領土・主権展示館の周知や内容・イベントの充実」を求める声が1/4を超えていること。認知経由としての「領土・主権展示館」は1.2%のみだったが、資料がしっかりと集められた上で一望できる、領土・主権展示館への需要はかなり大きい。

需要の大きさといえば「ウェブサイトやSNSによる広報」の期待も高く、42.0%(2017年までこの設問は「見易さ・分かりやすさを重視したウェブサイトの開設」だった)。インターネット経由で認知した人が1割強でしかなかっただけに、適切で分かりやすく、ハードルが低いタイプの専用サイトの開設や運用、SNSによる(公的な)情報発信を望む声は強い。

今リリースには調査目的として「尖閣諸島に関する国民の意識を調査し、今後の施策の参考とする」との文言が確認できる。今回の項目に関しては、この言葉通り、積極的かつ正しい方向性で「参考」にし、今後に活かしてほしいものである。

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※尖閣諸島に関する世論調査

2019年10月19日から30日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人3000人に対し、調査員による個別面接聴取方式によって行われたもので、有効回答数は1608人。2014年までの調査では20歳以上を対象としていたのに対し、2017年からは18歳以上を対象としているため、2014年分までと2017年分以降との間に厳密な連続性は無いことに注意が必要。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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