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夫の家事参加率、ゴミ出しは5割近く・日常の買物は4割強(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 出勤の際のゴミ出し。これも立派な家事への参加。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

夫の家事参加率は増加中

兼業主婦の増加に伴い、夫の家事参加の一層な積極化をとの雰囲気が強まりつつある。一方で古来からの習慣や就業時間の関係から、夫の家事の手伝いを敬遠する向きがあるのも事実。それでは実際、夫はどの程度家事に参加しているのだろうか。夫の家事参加の現状について、2019年9月に発表された全国家庭動向調査(※)の結果から確認する。

次に示すのは、夫が週に1回から2回以上、家事(今件では育児は含まれない)を行ったとする回答率を経年で記したもの。「週に1回から2回以上」なので、例えば平日は手掛けなくとも土日に実行すれば該当するため、「平日は就業で忙しいから家事の手伝いはしないが、土日は積極的に家事をしてくれる」のようなパターンの場合、該当することになる。なお空白部分はその当時、まだ該当項目の調査は実施していなかったことを意味する。

↑ 家事の種類別にみた週1~2回以上家事を遂行した夫の割合
↑ 家事の種類別にみた週1~2回以上家事を遂行した夫の割合

挙げられた項目に限れば、家事の遂行率は概して上昇を続けている(「炊事」は一度大きな減少を示した上で再上昇しているが)。つまり夫の家事手伝いが年々積極的になりつつあることを意味する。

値が特に高いのは「ゴミ出し」「日常の買物」「食後の片付け」「風呂洗い」などで、これらは時間がかかる、移動が必要になる、体力を要求されるものの、技術的なハードルは低め。夫が手掛けてもそれなりにこなしやすく、失敗によるリスクも低い。夫の家事参加としては適したテーマではある(「炊事」や「洗濯」とは対照的)。もっとも最近では洗濯機の性能の向上などを受けてだろうか、「洗濯」も高い値を示しつつある。それだけ妻の負担が減る機会が高まっている実情を意味する。

一方見方を変えると、週1~2回程度の「ゴミ出し」ですら、5割近くしか夫は手伝っていないことになる。作業ハードルを考えると、まだまだ値は低いと評せざるを得ない。

妻の年齢階層別や夫の帰宅時間別で確認

結果報告書では夫の家事手伝い率に関して、いくつかの属性区分による集計結果も掲載されている。そのうち気になるものを確認していく。まずは妻の年齢階層別。間接的には(歳が離れた夫婦はあまり想定できないことを考えれば)夫の年齢階層別でもあると見てもよいだろう。

↑ 妻の年齢階層別にみた週1~2回以上家事を遂行した夫の割合(2018年)
↑ 妻の年齢階層別にみた週1~2回以上家事を遂行した夫の割合(2018年)

「日常の買物」など一部で例外的な動きも見られるが、おおよそは「若年層ほど高い値」「年上になるに連れて低い値」傾向にある。理由はいくつか考えられるが「妻が年上になるに連れて夫は仕事が忙しく割ける時間が無い、または休日も疲れて家事をしたくない」「年上ほど夫は古い価値観にとらわれて家事を敬遠する」などが挙げられる。夫婦間の付き合い方、ライフスタイルそのものにおける世代間格差が生じているのも、年齢階層別で違いが生じる一因として挙げられよう。

「夫が忙しく、疲れてしまい、家事を敬遠する」との可能性は、次の夫の帰宅時間別の集計結果からも推測できる。

↑ 夫の帰宅時間別にみた週1~2回以上家事を遂行した夫の割合(2018年)
↑ 夫の帰宅時間別にみた週1~2回以上家事を遂行した夫の割合(2018年)

上記にある通り平日は仕事で時間が割けなくとも、土日に手掛ければ「週1~2回以上」のハードルはクリアできるはずなのだが、それでもなお帰宅時間が遅いほど、夫は家事手伝いをしなくなる傾向がある。土日も残業や仕事上の付き合いがあるのか、疲労困ぱいで休んでいるのかは今件調査項目だけではつかみきれないが、仕事の忙しさが家事手伝い率と大きな相互関係にあることは否めまい。

唯一「食後片付け」は帰宅時間が遅いほど、手伝い率は高い。食事の片付けをするのには家族が揃って食事をすることが前提になるので、せめて仕事の無い土日には家族揃って食事を取り、後片付けをするという具合なのだろうか。

単純作業に近く、技術をあまり要しない家事ならば、夫でも容易に手伝いをすることは可能。あとはいかに時間を抽出できるかと、やる気にかかっている。ちょっとした配慮、分担でも、妻には大いに役立つはずである。逆に仕事を増やすようなヘマばかりをしたのでは問題だが。

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※全国家庭動向調査

国立社会保障・人口問題研究所が5年おきに行っている調査で、家庭機能の変化の動向や要因を正確に把握するため、家庭での出産、子育ての現状、家族関係の実態を明らかにすることを目的としている。直近分となる2018年分は、2018年に調査票を配布、同年7月1日時点についての事実の記入をしてもらい、回収した結果を集計したもの。有効回答票数は10965票で、今件はそのうち有配偶の女性(つまり結婚した状態で夫がいる妻)が回答した6142票を分析対象としている。妻の年齢区分は29歳以下2.6%・30代13.2%・40代20.2%・50代20.0%・60代23.7%・70歳以上20.2%。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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