半世紀以上にわたるバスやタクシーの初乗り料金の推移をさぐる(2019年公開版)

↑ 交通要所ではよく見かけるバスやタクシー。人々の足として欠かせない存在。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

安定推移のバス、上昇続くタクシー

鉄道とともに地域を支える公共インフラ・公的交通機関の代表として知られるバス、そして私営ではあるがより汎用性・柔軟性が高いタクシー。両交通機関は日本社会全体の高齢化や地域の過疎化に伴い、これまで以上に注目を集めつつある。特にバスはコストパフォーマンスの面などで地方の鉄道路線が廃止された後の代替機関として運用されることも多い。今回はこの両交通機関の初乗り料金(運賃)の推移を総務省統計局の小売物価統計調査(※)の結果から確認する。

小売物価統計調査においてはバス・タクシーともに1958年から初乗り料金が公開されているので、2018年分までは年次データを、2019年分は月次で最新値を適用する。また両者とも該当期間すべての数字を使えるよう、基準値としてもっともふさわしい東京都23区内の値を用いている(小売物価統計調査では全国平均値は算出されていない)。

ただし2015年からは該当銘柄の調査対象に一部変更が行われている。バスはそのまま最低料金を対象としているので変更は無いが、タクシーは初乗り料金から4キロ走行(昼間)に差し替えられ、連続性が失われてしまった。そこで東京ハイヤー・タクシー協会のタクシー料金表から該当値を抽出する。

また東京都区部と三鷹市、武蔵野市において2017年1月30日以降、タクシーの初乗り料金が「1.052キロまでで410円」に改定された。これまでの「2.000キロまでで730円」とは初乗り分の距離も異なっているが、初乗りには違いないのでグラフにはそのまま用いる。なお旧来の初乗りの距離である2.000キロを新料金で利用すると、旧来の初乗り料金と同じ730円となる。

↑ バス・タクシー初乗り料金(東京都区部、円)(2019年は直近月)
↑ バス・タクシー初乗り料金(東京都区部、円)(2019年は直近月)

グラフ中でも説明しているが、1963~1972年分のバス初乗り料金のデータは、1キロメートル単位となっている。一方、他の期間は1区、あるいは1回分。そのため該当期間の料金は直前直後と比べると数分の一の値となり、やや見苦しい形になってしまう。1962年と1963年のデータを比較して倍率を算出し、該当期の数字を無理やり合成してもよいのだが、それではあまりにも誤差が大きすぎる。さらに初乗り料金には固定費用が上乗せされており、食品のように「分量から均一化」とは勝手が違うので、この計算方法では具合が悪い。そこで今回はあえてそのまま掲載することにした。

それらイレギュラーな期間を除けば、バス料金・タクシー料金ともに1970年以降は漸次値上げ、1990年代半ば以降はほぼ横ばいの傾向を見せている。またバス料金と比べてタクシー料金は上昇額が大きい。

今件グラフではほとんど変化が無いように見えるが、2014年4月からの消費税率改定に伴い、2014年はそれぞれ年次で5円・15円の値上がりをしている。2015年以降はバスはそのまま213円を維持、タクシーは2015年に年次で5円引き上げで730円となり、2016年はそのまま、そして2017年は初乗り距離の変更とあわせ、大きく料金が下がる形となっている。

消費者物価を反映させて再計算

バスやタクシーなどの公共・半公共交通機関の場合、単純に金額の移り変わりだけで無く、当時の物価を考慮した上で、その変動を考えた場合がよいとの考えもある。これらの交通網は多くの人が繰り返し使う以上、各家計への負担を考えた場合、単純な価格変動だけでは比較が難しいからである。

そこで各年のバス料金・タクシー料金に、それぞれの年の消費者物価指数を考慮した係数を用いた上で比較用の値を算出することにした。消費者物価指数の各年の値を参考に、2019年の値をベースとして他の年の料金を計算する。例えば1958年のバス代初乗り料金は88円との値が出ているが、これは「1958年当時の物価が2019年と同じ水準だった場合、バスの初乗り料金は88円になる」次第。

↑ バス・タクシー初乗り料金(東京都区部、2019年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2019年は直近月)
↑ バス・タクシー初乗り料金(東京都区部、2019年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2019年は直近月)

料金の上昇時である1970年から1990年半ばにかけては、物価そのものも大きく上昇していることもあり、実質的な負担料金はそれほど大きな変化を見せていないことが、この試算から分かる。特にバス料金は1980年前後からほぼ横ばいを続けており、公共機関としての観点では、優れた料金体制を維持していることになる。一方タクシーはといえば、消費者物価を反映させた上でも、多少ながらも増加を見せている。2017年の急落は距離が縮んでいるためであるが、「初乗り」の概念だけで考えれば大きな値下げには違いない。

普段から利用するバスやタクシーで、何気無く支払っている初乗り料金。それらが半世紀以上の間にどのような推移を見せたかを知れば、ある種の感慨深さを覚えるに違いない。

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※小売物価統計調査

国民の消費生活上重要な財の小売価格、サービス料金および家賃を全国的規模で小売店舗、サービス事業所、関係機関および世帯から毎月調査し、消費者物価指数(CPI)やその他物価に関する基礎資料を得ることを目的として実施されている調査。

一般の財の小売価格またはサービスの料金を調査する「価格調査」、家賃を調査する「家賃調査」および宿泊施設の宿泊料金を調査する「宿泊料調査」に大別。価格調査および家賃調査については、全国の167市町村を調査市町村とし、調査市町村ごとに、財の価格およびサービス料金を調査する価格調査地区(約27000の店舗・事業所)と、民営借家の家賃を調査する家賃調査地区(約28000の民営借家世帯)を設けている。また、宿泊料調査については、全国の99市町村から320の調査旅館・ホテルを選定している。

価格調査および家賃調査の調査市町村は、都道府県庁所在市、川崎市、相模原市、浜松市、堺市および北九州市をそれぞれ調査市とするほか、それ以外の全国の市町村を人口規模、地理的位置、産業的特色などによって115層に分け、各層から一つずつ総務省統計局が抽出し167の調査市町村を設定している。宿泊料調査では、都道府県庁所在市又は全国の観光地の中から宿泊者数の多い地域を選定し、99の調査市町村を設定している。調査市町村ごとに宿泊者数の多い旅館・ホテルなどを調査宿泊施設として選定している。

価格調査については、調査員が毎月担当する調査地区内の調査店舗などに出かけ、代表者から商品の小売価格、サービス料金などを聞き取り、その結果を調査員端末に入力する。家賃調査については、原則として調査世帯を訪問し、世帯主から家賃、延べ面積などを聞き取り、同様に調査員端末に入力する。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。