アメリカ合衆国の人達はNATOの加盟についてどのように考えているのだろうか
意見の対立や役割分担の問題から離脱論も話題に上るようになった、アメリカ合衆国におけるNATO(北大西洋条約機構、North Atlantic Treaty Organization)加盟の意義。国民感情の実情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2019年4月に発表した調査報告書「Large Majorities in Both Parties Say NATO Is Good for the U.S.」(※)から確認する。
NATOはその名前の通り北大西洋に面する諸国を中心に結成されている軍事同盟。冷戦時はソ連を中心とした共産主義国による軍事同盟・ワルシャワ条約機構と対峙していたが、冷戦終結後は対テロ戦争的な組織の意味合いを強くしている。他方、現職のトランプ・アメリカ合衆国大統領は大統領選挙時からNATO不要論を掲げ、就任後もNATOへの負担の大きさや他の加盟国との間での格差による不満を言及するなど、アメリカ合衆国におけるNATOの存在意義はゆらぎを見せている。
次に示すのはアメリカ合衆国がNATOの一員であることは、同国にとってどのような影響があるのか、択一で答えてもらったもの。あくまでもアメリカ合衆国の一般国民の考えだが、よい影響があるとの認識を持つ人は77%と多数派。悪い影響を持つと考える人は15%に留まる形となった。
支持政党別で動向を確認すると、トランプ大統領の所属する共和党の支持者では悪い影響の認識を持つ人が18%と、民主党支持者の11%の2倍に迫る値を示している。賛成派も71%でしかなく、民主党支持者の82%よりも11%ポイントも低い。トランプ大統領の認識に賛同しているのか、あるいは共和党支持者がこのような認識だからこそ、トランプ大統領もあのような発言をしているのかもしれない。しかし一方で、どちらの政党支持者でも、NATOがアメリカ合衆国によい影響をもたらしているとの認識を持つ人が多数派であることに変わりは無い。
それではそのNATOの存在は、アメリカ合衆国とその他の同盟国と、どちらにとってより重要だとアメリカ合衆国の人達は考えているのだろうか。
重要性を勘案する意味があるのか否か、そして一般の国民が認識していることが軍事的、外交的に正しいのか否かはまた別の話だが、少なくともアメリカ合衆国の国民の視点では、NATOの存在はアメリカ合衆国よりも他の同盟国にとって大いに意義があり、アメリカ合衆国にとっては比較するとそれほど大きな意味があるわけでは無いとの考えが多数を占めているようだ。もっとも「双方同じぐらい」を足すと過半数の人が「NATOは他の同盟国と同じぐらいか、それ以上にアメリカ合衆国にとって重要な存在だ」と考えていると読み取ることもできる。
ただし支持政党別では共和党支持者に限ると47%もの人が、NATOはアメリカ合衆国よりも他の同盟国にとって重要だとの認識を持っている。見方を変えればアメリカ合衆国がNATOという軍事同盟で、他の同盟国にいいように使われている、と読むこともできる。共和党支持者の方が民主党支持者よりも、NATOの一員であることがアメリカ合衆国に悪い影響があるとの回答が多いのも、この辺りが一因なのかもしれない。
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※Large Majorities in Both Parties Say NATO Is Good for the U.S.
2019年3月20日から25日にかけてアメリカ合衆国内に住む18歳以上の男女の中からRDD方式によって選ばれた人に対し、電話による対話回答形式によって行われたもので、有効回答数は1503人。固定電話は300人、携帯電話は1203人。国勢調査の結果に基づいたウェイトバックが実施されている。
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