期待と不安が交差…2019年3月景気ウォッチャー調査の実情をさぐる

↑ 景気の実情はどうだろうか。街中の動向でも推し量ることはできるが(筆者撮影)。

現状は下落、先行きも下落

内閣府は2019年4月8日付で2019年3月時点における景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」(※)の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落、先行き判断DIも下落した。結果報告書によると基調判断は「このところ回復に弱さがみられる。先行きについては、海外情勢などに対する懸念もある一方、改元や大型連休などへの期待がみられる」と示された。前回月までは「緩やかな回復基調が続いている」で始まる文言だったことから、景況感がネガティブさを見せる形となっている。

2019年3月分の調査結果をまとめると次の通り。

・現状判断DIは前回月比マイナス2.7ポイントの44.8。

 →原数値では「よくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「変わらない」が減少、「ややよくなっている」が変わらず。原数値DIは46.7。

 →詳細項目は全部が下落。「サービス関連」のマイナス4.3ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス0.3ポイントの48.6。

 →原数値では「やや悪くなる」が増加、「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」「悪くなる」が減少。原数値DIは47.9。

 →詳細項目では「小売関係」のみが上昇。「住宅関連」のマイナス3.8ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は「サービス関連」。

今回現状判断DIが大きく下落した理由はいくつか考えられるが、例えば3月から食品の値上げがスタートして消費者の購入意欲が低下しているとの指摘や、世界経済の鈍化傾向の報が相次ぐことで設備投資の抑圧への懸念が生じているなどが挙げられる。

昨今では現状判断DIにおいてやや低迷、ぬるま湯的な軟調さと表現できる動きにあるのが気になるところ。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

ここ数か月は現状判断DIのさらなる低下傾向、つまり景況感の悪化が確認でき、報告書のコメントもそれを裏付けるようなものに変わっている。

DIの動きの中身

次に、現状・先行きそれぞれのDIについて、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(~2019年3月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の現状判断DI(~2019年3月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月の現状判断DIは合計で前回月から2.7ポイントのマイナス。詳細項目では全項目で下落。もっとも大きな下げ幅は「サービス関連」による4.3ポイント。

景気の先行き判断DIでは詳細項目で「小売関連」以外が下落。下げ幅は「住宅関連」の3.8ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(~2019年3月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の先行き判断DI(~2019年3月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月で基準値を超えている詳細項目は皆無。

大型連休と改元vs値上げと国際情勢と消費税

報告書では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状

・来客数は前年比100%と回復傾向である。さらに、客単価は同105%前後を維持している。新生活需要が堅調に伸びていることや、キャッシュレス決済特需が要因と考えられる(家電量販店)。

・当初、ゴールデンウィークで高額な旅行に申込みをしていた人が、若干安いプランに移行している傾向がある(旅行代理店)。

・3月から食品の値上げがスタートしている。対象となった商品の伸びは非常に鈍化しており、消費者の動きは節約志向に大きくかじを切っている(スーパー)。

・3月は雨の影響や気温の寒暖差もあり、冬物、春物商材ともに売れず、来客数も少ない(衣料品専門店)。

■先行き

・ゴールデンウィークの10連休による、周辺エリアの観光客数増加や外国人旅行者の来園、イベントなどの集客施策の実施により、引き続き来園客数の増加を期待する(遊園地)。

・新年度は新型車種が早々に発売され、新規来店客も見込める。消費税引上げ前の需要もあると思うが、増税後にも新型車種の投入を控えており、落ち込みはないと思われる(乗用車販売店)。

・ゴールデンウィークが10連休となるため期待はあるが、その後の消費疲れを考えると余り変わらないとみている(一般レストラン)。

・国際情勢や経済が不安定であり、国内においても不透明さが増している。実質の材料費や人件費は、今後も上昇する(設計事務所)。

今回月も前回月に続き暖冬などの気候の影響が生じているが、衣料品で冬物と春物双方が売れない組合わせが生じてしまうのは何とも不幸な話ではある。前回月で見受けられた、2019年1月1日から中国で施行された電子商取引法(電子商取引関連全般を適用対象としたもので、納税義務や販売禁止対象品の増加、営業許可証の取得義務など、大幅な規制強化が主な内容)によるインバウンドの売上減少懸念は確認できない。影響があったとしてもささいなものだったのだろう。

ゴールデンウィークの10連休化にはポジティブな意見が多いが、一方でその後の消費疲れを心配する声もある。他方、それより前のイベント的な動きとなる3月以降の食品値上げについては、消費者の消費意欲低下を目にしたとの声がある。

企業関連では中国をはじめとした世界経済の後退感への不安が強く表れている。

■現状

・仕事の話は多くなっているが、鉄骨単価や下請額の上昇で、単価が合わない(建設業)。

・世界経済の鈍化により、設備投資が抑制されるなどの影響を懸念している(輸送用機械器具製造業)。

■先行き

・新年度の広告予算を削減した得意先が幾つかみられる(広告代理店)。

・中国の景気後退の影響により輸出ウエイトの高い取引先を中心に減産による生産調整の動きがあり、今後減収減益が見込まれる(化学工業)。

人件費や材料費などの経費の上昇は企業側からすれば頭の痛い話ではある。他方、世界的な景況感の後退ぶりを受け、守りに入るなどの対応を示す企業の動きが複数確認できる。

雇用関連では人手不足が相変わらずである一方、世界的な景況感の動きが雇用にも影響を与え始めている雰囲気を覚えさせる。

■現状

・中小企業の採用難は依然として深刻である。求人広告を繰り返し掲載しても問合せが少ない。新卒が採れないのでシニア雇用にシフトする傾向が強まっている(新聞社[求人広告])。

■先行き

・中国経済の減速から、影響を受ける製造業の話が目立ち始めている。製造業大手の子会社で、生産調整や在庫調整から週休3日を始めた企業がある(民間職業紹介機関)。

新卒が採れないからシニア層をとの動きは興味深いが、それよりもロスジェネと呼ばれる中年層に目を向けないのは不思議な話ではある。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。人材プールそのものが枯渇しているのなら話は別だが、現状は多分に「適切な対価引き上げをしていないので人手が集まらない」状況に他ならない。一部で「人手不足だが賃金が上がらない」との意見もあるが、責任回避のための表現の差し替えに過ぎない。

今件のコメントで全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計48件、先行き計59件、合わせて107件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好13件、やや良好21件、不変93件、やや悪い32件 悪い12件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

コメントには人手不足の現象が、多分に労働環境の改善が求められているとの労働市場のシグナルであるにもかかわらず、雇用市場の変化に対応しようとしない、できない企業において、人手不足感が強いとの印象を受けるものが少なからず見受けられる。上記で触れているが、「人材不足は賃金不足」である(賃金だけに限らないが)。他方、現状を見据えた上で問題意識を明確にし、状況改善へとかじ取りをする企業の動きや状況認識もある。

なお消費税増税に関しては先行きのコメントにおいて「消費税」だけで215件もの言及が確認できる。駆け込み需要や景況感対策の施策への期待の声もあるが、ネガティブな内容の方が多く、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。

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※DI

※景気ウォッチャー調査

内閣府が毎月発表している、毎月月末に調査が行われ、翌月に統計値や各種分析が発表される、日本全体および地域毎の景気動向を的確・迅速に把握するための調査。北海道、東北、北関東、南関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映する傾向が強い業種などから2050人を選定し、調査の対象としている。分析と解説には主にDI(diffusion index・景気動向指数。3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目・基準値で、例えば全員が「(3か月前と比べて)回復している」と答えれば100%、全員が「悪化」と答えれば0%となる。本文中に用いられている値は原則として、季節動向の修正が加えられた季節調整済みの値である)が用いられている。現場の声を反映しているため、市場心理・マインドが確認しやすい統計である。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。