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4マスそれぞれの業種別広告費前年比から広告主の姿勢をさぐる(2018年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 紙媒体は公知力の減少に伴い、広告費も減少中との話だが。(写真:アフロ)

電通は2019年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2018年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に4大従来型メディア(テレビ、雑誌、新聞、ラジオ。4マス)へ広告を出稿した業種別企業の広告費の前年比を確認する。各業種がそれぞれの媒体に与えている・認識している公知力、ウェイトの変化などが把握できよう。

直近となる2018年における媒体別広告費前年比は次の通り。インターネットが堅調、4大従来型メディアはすべてマイナス、紙媒体とテレビは不調、従来型はおおよそ軟調との結果が出ている。「(インターネット広告費全体の)うち新聞デジタル」などインターネット広告費の詳細項目は2018年分から調査・開示されたため、前年比が存在しない。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2018年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2018年)

今調査報告書では広告出稿企業(クライアント)を21業種に区分し、4大従来型メディア(テレビメディアにおいては衛星メディア関連は除く。グラフでは地上波テレビと表記)それぞれに対する出稿広告費、各メディアが受領している出稿額全体に対する構成比、そして前年比の一覧が掲載されている。

まずは新聞についてその動きに関するグラフを生成し、状況を確認する。なお次以降4媒体のグラフは、すべて縦軸の区分を同じものとし、状況の比較がし易いようにしている。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(新聞、前年比)(2018年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(新聞、前年比)(2018年)

紙媒体として軟調さが際立つ新聞だが、その内情としてほとんどの業種でマイナスを示しているのが要因であることが把握できる。最大のマイナス幅を示したのは家電・AV機器で2割を超えている。他にも食品、ファッション・アクセサリー、精密機器・事務用品、自動車・関連品、不動産・住宅設備、外食・各種サービス、官公庁・団体がが1割超えの下げ幅。情報の速報性へのウェイトが高い業種が多々見受けられる。飲料・嗜好品、薬品・医療用品はプラスだが、その幅は限定的。

続いて雑誌。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(雑誌、前年比)(2018年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(雑誌、前年比)(2018年)

全体の下げ幅が新聞よりも大きいだけに、項目別でも一層の状況の悪さが印象的。最大の下げ幅を示しているのは飲料・嗜好品で3割超え。他にも2割近い下げ幅の業種が複数見受けられる。エネルギー・素材・機械や家庭用品、案内・その他のようにプラスを示している業種もあるが、金額が大きい業種が大きく下げているだけに、全体としても下げ方が大きなものとなっている。

紙媒体との観点では親和性が高いはずの出版(新聞、雑誌、書籍、語学教材、他の刊行物)ですらマイナス18.4%と大きく下げているのは、何とも皮肉な結果ではある。無論一部は同一コンテンツを用いたインターネット媒体上に流れているのだろうが、それでも紙媒体としての雑誌上の広告が減ったことに違いは無い。

次はラジオ。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(ラジオ、前年比)(2018年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(ラジオ、前年比)(2018年)

中には出版のように4割近くの下げ幅を示している業種もあるが、マイナス幅の業種は限定的。プラスを計上した業種の多さが目立つ。

最後はテレビ。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(地上波テレビ、前年比)(2018年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(地上波テレビ、前年比)(2018年)

最大の下げ幅を示したのは出版のマイナス13.0%。最大の上げ幅は精密機器・事務用品の56.6%。下げた業種数が多く、上げた業種だけでは全体をプラスにまでけん引するまでには至らなかった感がある。

4マスの中では一番広範囲への媒体力・告知効果が高いのがテレビ。各商品・サービスとの相性のよし悪しもあるが、各業種の勢いが多分に表れているのが興味深い。

今回の各グラフとそれぞれの媒体における各種業種への報道姿勢を比較すると、色々と面白い連動性が見えてくる、かもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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