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アメリカ合衆国では66%がソーシャルメディア上のbotによるニュースは悪い影響を及ぼすと考えている

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ インターネット上の多数のニュース。そのうちどれほどがbotによるものか。(写真:アフロ)

フェイクニュース騒動で大きく揺れているが、ニュース分野の情報が配信側も受信側もソーシャルメディアによって大きな恩恵を受けているのは事実。では、どれほどまでがbot(Robotが由来。機械的に情報を生成し、定められた仕組みに従って情報を公開する自動プログラム。あるいは公開された情報そのもの)によるものだろうか。アメリカ合衆国の人達の認識を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年10月に発表した調査「Social Media Bots Draw Public's Attention and Concern」(※)の結果報告書を基に確認する。

ソーシャルメディア上にはbotによる情報が多数流れているが、総数はどれほどか、流れる情報全体における割合はどれほどかを確認する方法は無い。ソーシャルメディア上のbotを知っている人に限り(知らなければ判断のしようが無い)、ソーシャルメディア上に流れるニュースのうち、どれほどがbotによるものかと考えているか、その意見を聞いた結果が次のグラフ。全体では「大変な量」「そこそこの量」合わせて、それなりに大量のニュースがbotによって流されていると思っている人は8割を超える結果となった。

↑ アメリカ合衆国の人達がソーシャルメディアから得るニュースのうちどれほどがbotによるものだと思っているか(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)
↑ アメリカ合衆国の人達がソーシャルメディアから得るニュースのうちどれほどがbotによるものだと思っているか(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)

先の大統領選で多くのbotによっていわゆるフェイクニュースがソーシャルメディア上に流れ、それが選挙の投票動向を左右したと認識する人もいることから、botによるニュースの配信に興味を持つ人は多い。結果として強い関心をソーシャルメディア上に流れるニュースに対して抱くようになり、あれもこれもbotによるものに違いないと確信する、あるいはプロフィールなどから確認することになったのだろう。「大変な量」との認識は17%だが、「そこそこの量」まで合わせると81%になる。無論、これが正しい判断によるものかはまた別の話であるし、さらにbotによって配信されたニュースの内容が正しいものか否かもまた別の話。

属性別では大きな違いは無く、おおよそ1割強から2割が「大変な量」、6割前後が「そこそこの量」と判断している。30~49歳層でやや大きめの値が出ているのは、仕事などでニュースに触れる機会が多いからだろうか。また学歴別で低学歴の方が「大変な量」は高い値が出ているのに対し、「そこそこの量」は高学歴の方が高く、結果として「大変な量」「そこそこの量」の合計値は高学歴ほど高くなるのは興味深い傾向。

それでは出来事や問題に関わるニュースがbotで配信されることについて、どのような影響がアメリカ合衆国(に住んでいる人)に生じると考えているのだろうか。単にニュースとしての表現ではなく、出来事や問題に関わるとの前提が表記されていることから、報道機関によるニュースに限らず、イベントでの出来事や時節に関する主張なども合わせたものというニュアンスが含まれていると解釈した方がよいだろう。

↑ 出来事や問題に関わるニュースにおいてbotの存在はどのような影響を及ぼすと考えているか(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)
↑ 出来事や問題に関わるニュースにおいてbotの存在はどのような影響を及ぼすと考えているか(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)

先の大統領選におけるフェイクニュースに関する報道の影響からなのか、「よい影響」とする回答は1割前後に留まっており、「悪い影響」は6割前後を占める結果となっている。どのような内容を流そうとbotによるニュースなど世の中には大きな影響は与えないとする意見は2割前後。おおよそでは悪い影響が生じるとの認識と解釈してよさそうだ。

属性別では大きな差異は無し。強いて言えば男性、高学歴の方が「悪い影響」との認識を持つ人が多い。また興味深いことに、民主党支持者の方が「よい影響」との回答率は高い。ただし「悪い影響」の回答率もまた、民主党支持者の方が高いのだが。

あくまでもこれは個々の認識の限りで、実際にbotによってソーシャルメディア上に流されたニュースが悪い影響を及ぼすのか、よい影響をもたらすのかは確認することができない。一つ一つの事例を見ればよし悪しの判断はできたとしても、ソーシャルメディアに流れているbotによるニュースすべてを確認することはできず、さらには何を基準に、よいのか悪いのかとの判断も難しいからだ。

とはいえ、アメリカ合衆国においてソーシャルメディア上のbotを知っている人に限れば、botによるニュースはよくない存在であるとの認識が多数派であることもまた、否定できないことに違いは無い。

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※Social Media Bots Draw Public's Attention and Concern

Pew Research Centerの調査パネルATP(American Trends Panel)によって行われたもので、調査実施期間は2018年7月30日から8月12日。有効回答数は4581人。ATPはRDDで抽出された固定電話と携帯電話番号への通話で18歳以上のアメリカ合衆国居住者に対して応募が行われたもので、国勢調査の結果でウェイトバックが実施されている。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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