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「ソーシャルメディア上の書き込みがbotか否かをそれなりに見分けられる」アメリカ合衆国では47%

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ソーシャルメディア上のその情報、人の手によるものか、botによるものか。(ペイレスイメージズ/アフロ)

ソーシャルメディア上には多数のbott(Robotが由来。機械的に情報を生成し、定められた仕組みに従って情報を公開する自動プログラム)による情報が配信されている。しかしそのbotの存在を知らず、人が書き込んだものと誤認する人もいる。botか否かを見分けられるかなどについて、アメリカ合衆国の実情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年10月に発表した調査「Social Media Bots Draw Public’s Attention and Concern」(※)の結果報告書を基に確認する。

今調査対象母集団では66%の人がソーシャルメディア上に、botというプログラムによって生み出されたものによる情報が配信されていることを知っている。

↑ ソーシャルメディアにおけるbotを知っているか(アメリカ合衆国)(2018年7~8月)
↑ ソーシャルメディアにおけるbotを知っているか(アメリカ合衆国)(2018年7~8月)

すべての道具にいえることだが、道具は使い方次第でよい効果も悪い影響も生み出しうる。そしてその道具を使う人の意図により、その結果の方向性も多分に左右される。ソーシャルメディアにおけるbotは何のために使われていると人々は思っているのだろうか。無論現実にはそれぞれのbotごとに違いがあるが、全体的としてどちらの思惑が多いと考えているのかを答えてもらったのが次のグラフ。8割もの人が悪い目的で使われているとの認識を示している。正確には悪い目的で使われているbotの方が多そうだ、というところか。

↑ ソーシャルメディアにおけるbotは何のために使われていると考えているか(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)
↑ ソーシャルメディアにおけるbotは何のために使われていると考えているか(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)

属性別でも大きな違いは無く、botは悪い目的で使われているとの認識が多数となっている。あえて言えば低学歴・女性・民主党支持者の方がbotはよい目的で使われているとの認識を持つ人がいくぶん多いと読めるだろうか。

それではよしにつけ悪しきにつけ、特定の目的で運用されソーシャルメディア上に情報を配信しているbotに関して、その情報がbotによって生成されたものか、それとも人間が書き込みしたものか、正しく見分ける自信はあるだろうか。

↑ ソーシャルメディア上の発言がbotによるものか否かを正しく見分ける自信があるか(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)
↑ ソーシャルメディア上の発言がbotによるものか否かを正しく見分ける自信があるか(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)

昨今では大手新聞社でも一部においてbotのような自動生成プログラムによる記事の配信をしている。またテンプレートの文章を基に一部を書き替えただけの文章は、完全に人の手によるものと言えるのか否か。botとはどのようなものまで該当するのかという定義論にまでさかのぼる必要性がある。またソーシャルメディア上のbotを自称するアカウントでも、完全にbotとしての運用では無く、時に運用者が自ら書き込みをする場合もあり、区別は難しくなっているのが実情(チューリングテストのようなものだ)。

今調査においても、正しく見分けられるとの自信を大いに持っている人は7%に過ぎず、そこそこある人を合わせても半数に届かない。年齢階層別では年が上になるほど、男女別では女性の方が見分ける自信が無いと回答している。

興味深いのは学歴別で、高学歴ほど自信が無いとしている。ただしこれは認識の問題で、実際に見分けられているか否かは別として、見分ける自信があると過剰な自己評価をしているのが実情かもしれない。

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※Social Media Bots Draw Public’s Attention and Concern

Pew Research Centerの調査パネルATP(American Trends Panel)によって行われたもので、調査実施期間は2018年7月30日から8月12日。有効回答数は4581人。ATPはRDDで抽出された固定電話と携帯電話番号への通話で18歳以上のアメリカ合衆国居住者に対して応募が行われたもので、国勢調査の結果でウェイトバックが実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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