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「正に」と「まさに」、どちらがよいと思われているか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 公共施設での表記を注意しながら見るのも一興(筆者撮影)

送り仮名の付け方など漢字の使い方について、学校で教わる表記の仕方と、官公庁などが示す文書や法令の表記の仕方が異なる場合がある。例えば何らかの事柄を行うために必要な手法、手順について、公用文に用いられる表記は「手続」だが、学校で教わる表記は「手続き」。それではどちらの書き方がよいと世間一般には思われているのだろうか。文化庁の調査「国語に関する世論調査」(※)の最新版となる2017年度版の概要報告書の内容から確認する。

次に示すのは公用文で使われている、学校で教示される、それぞれの表記の仕方を併記し、どちらの書き方がよいかと尋ねた結果。設問では単に「どちらがよいと思うか」のみで、具体的な利用状況などは指定されていない。

↑ どちらの書き方がよいと思うか(公用文/学校教示)(2018年)
↑ どちらの書き方がよいと思うか(公用文/学校教示)(2018年)

この類の表記は多々存在するが、少なくとも今回挙げられたものに関しては、大部分が学校で教わった表記の方がよいと考える人が多数に及んでいることが明らかになった。特に「若しくは/もしくは」「手続/手続き」「取組/取り組み」では、公用文の表記をよいと思う人は1割台でしかない。やはり官公庁の文書に触れる機会そのものが少ないことから、普段使う表現の方をよいとする考えが多いようだ。

「御案内/ご案内」は公用文表記が35.5%、学校教示は53.9%となり、公用文表記の回答率が多少高めだが、公用文による表記が少数派には変わりない。公用文表記が優勢なのは「打合せ/打ち合わせ」と「売上高/売り上げ高」の2つのみ。特に「売上高/売り上げ高」は公用文表記が73.3%と圧倒的な値を示している。

報告書では調査の結果数字のみを挙げ、どちらが望ましいかの説明は一切無い(元々現状確認のための調査に過ぎない)。いずれを用いても問題視されることは無いはずだが、官公庁側から発信する文書では公用文表記の方が望ましいし、学校の試験などでは学校教示の表記の方がリスクは低いだろう。もちろん同一文書内ならば、どちらかの表記に統一すべきであることは言うまでもない。

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※国語に関する世論調査

最新分となる2017年度版は2018年3月に全国16歳以上の男女に対して個別面接調査方式で行われたもので、有効回答数は2022人。調査対象の抽出方式や属性別構成比は非公開。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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