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政治への関心や自分の生活とどちらが大切か…政治への思いの実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ デモ活動も政治への想いの体現化のひとつ。(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

国民全体に対するさまざまな施策を国家単位で執り行う活動や、その施策そのもの、さらにはそれらを成すためのさまざまな様式、意識決定などをまとめて政治と呼んでいる。その政治に対し、人々はどの程度関心を持ち、いかなる思いを抱いているのか。今回は総務省が2018年7月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「平成29年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、政治にまつわる4項目の調査結果(設問に対しどれだけ同意できるか)を抽出し、その実態を確認する。

まずは「普段から政治に対して関心がある」。

↑ 自分の気持ちに近いもの(普段から政治に対して関心がある)(2017年)
↑ 自分の気持ちに近いもの(普段から政治に対して関心がある)(2017年)

全体では関心派(「あてはまる」「ややあてはまる」)は約4割、無関心派(「あまりあてはまらない」「あてはまらない」)は約6割。男女別では男性の方が関心が強く、年齢階層別では若年層ほど無関心派が多い。学生・生徒も10代とあまり変わるところが無い。保護者の下で生活している人が多分にいることもあり、政治への関心まで注力が回らない、優先順位が後回しにされてしまうのだろうか。選挙の投票率は一般的に若年層ほど低い値を示すが、この値を見ると納得してしまう(直近の参議院議員選挙では10代の投票率の方が20代や30代よりも高い結果が出たが、これは政治への関心よりもむしろ、住民票の問題や多忙感が影響しているものと思われる)。

↑ 第24回参議院議員通常選挙 年齢階層別投票率(5歳区切り)(公開値より筆者作成)
↑ 第24回参議院議員通常選挙 年齢階層別投票率(5歳区切り)(公開値より筆者作成)

続いて「政治のことよりも自分の生活の方が大事だと思う」。

↑ 自分の気持ちに近いもの(政治のことよりも自分の生活の方が大事だと思う)(2017年)
↑ 自分の気持ちに近いもの(政治のことよりも自分の生活の方が大事だと思う)(2017年)

おおよそ8割は「政治より自分の生活が大切」で、政治にウェイトを置く人は2割程度。政治に重点を置いても、結局は自分自身の生活にも反映されうる、それが直接的か間接的かの違いでしかないのだが、やはり直結する方に注力してしまうのは人の性というものか。一方、よく見ると10代から40代、特に30代までの層では「あてはまる」の回答率が高めに出ており、最初の「政治への関心」の度合いとの連動性も想起される。自分の生活の方が大切なので、あまり政治には関心を寄せないと考えれば道理は通る。

次は「我々が少々騒いだところで政治はよくなるものではないと思う」。

↑ 自分の気持ちに近いもの(我々が少々騒いだところで政治はよくなるものではないと思う)(2017年)
↑ 自分の気持ちに近いもの(我々が少々騒いだところで政治はよくなるものではないと思う)(2017年)

個々の意思の集合が大きな意思となることを考えると、それぞれが同じようにあきらめたのでは、集団としてもその流れに従ってしまう。しかし仮に自分自身が何らかの動きを示しても、それだけですぐに世の中が変わるわけではない。そこに無力感を覚えるのは理解できる。

他方、自分の所属する属性で同じような考えを持っている人が多数いても、その意思がないがしろにされている雰囲気を覚えると、個々の意見ですら通りにくいと認識してしまうことがある。10代から30代、そして学生・生徒で「あてはまる」の値が高めに出てしまうのも、自分達の考えが軽視されている想いを抱いているからだと見ると、納得はできる。逆に40代から60代で「あまりあてはまらない」の値が増えていくのも、意識の奥底で自分の属性の意見が比較的通りやすい、思っている通りに世の中が動いていることを認識している結果ではないだろうか。

最後は「政治のことは難しすぎて自分にはよく分からない」。

↑ 自分の気持ちに近いもの(政治のことは難しすぎて自分にはよく分からない)(2017年)
↑ 自分の気持ちに近いもの(政治のことは難しすぎて自分にはよく分からない)(2017年)

他の結果を裏付ける動きを示している。女性、若年層ほど「難しい、自分には分からない」との意見が多い。特に10代は7割強が賛意を示している。そして歳を経るに連れてその値は減っていく。若年層ほど政治に消極的、無関心なのも、要は難しいからに他ならない。もちろん難しいのが原因で、その他の姿勢が結果では無く、それぞれ相互に結果と原因となっている部分もあるのだろう。

先の参議院議員選挙(2016年7月10日投票)は初の18・19歳も投票に参加した上での国政選挙となったわけだが、投票率は上記グラフにもある通り、18・19歳では20代や30代前半よりも高い値が出ている。これは初の20歳未満の投票として注目を集めたのと主に、就業をしている若年層と比べて投票する時間の余裕があること、投票権を得る場所と現在居住地が同じである人が大部分なことなどが原因として考えられる。政治への関心の度合いは、今件の調査結果の限りでは、それより上の若年層とさほど変化は無いだろう。

無論、実際に投票ができるとなれば、それに絡んで政治への興味関心が増す可能性もある。少しずつだが10代や学生・生徒に関する各種回答値にも変化が生じるかもしれない。

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※平成29年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2017年11月11日から17日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケートと日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。グラフ・本文中の表記の「10代」は、厳密には13~19歳を意味する。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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