Yahoo!ニュース

150年以上にわたる原油価格の移り変わりをさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 原油は昔も今も重要な地下資源に違いない。その価格動向は。(写真:アフロ)

・原油価格は額面上では長らく1バレルあたり数ドルで推移。石油危機で上昇し、その後は大きな価格変動の波に。

・2007年以降の金融危機の中で、原油価格は史上最高値をつける。今現在でもその記録は破られていない。

・物価を考慮すると石油危機で生じた原油価格の高騰と、金融危機のそれとの間には、大きな違いは無い。

ガソリンや灯油などに精製されたり、工業製品の原材料として、日常生活の維持には欠かせない存在の原油。その原油の価格について、長期間にわたる動向を国際石油資本BP社が毎年公式サイト上に公開する、エネルギー関連の白書「Statistical Review of World Energy」から確認する。

白書では年次ベースながらも1861年以降の件油価格を確認できる。ただし1861年~1944年はアメリカ合衆国内の国内平均価格、1945年~1983年はRas Tanura(サウジアラビアの最大の原油積出港)の価格、1984年以降はブレント(Brent)原油価格であり、厳密な連続性は無い。とはいえ、それぞれの価格が大規模な違いを見せることは考えにくく、資料性は評価できる。なお価格は原油を取引する際の標準的な単位であるバレル(42ガロン・158.987294928リットル)あたりのものである。

↑ 原油価格(1861年~1944年は米国内平均価格・1945年~1983年はRas Tanura(サウジアラビアの最大の原油積出港)の価格・1984年以降はブレント(Brent)原油価格、米ドル)
↑ 原油価格(1861年~1944年は米国内平均価格・1945年~1983年はRas Tanura(サウジアラビアの最大の原油積出港)の価格・1984年以降はブレント(Brent)原油価格、米ドル)

かつて原油価格は少なくとも額面上は数ドル程度で推移していた。それがいわゆる石油危機(オイルショック)で値を上げ、以降価格は激しい乱高下を示すことになる。そして金融危機以降の先物市場への過剰資金流入に伴う大変動が、いかに歴史的高値を付ける結果となったのか、さらに現状でもその時の高値の記録が更新されていないことも確認できる。

白書の原油価格動向の資料で興味深いのは、当時の額面だけで無く、直近年のアメリカ合衆国の物価に連動させた額も併記していること。当時の物価水準でどれぐらいの金額だったのかを容易に推測できる。戦後(1945年以降)に仕切り分けを限定したグラフも併記する。

↑ 原油価格(1861年~1944年は米国内平均価格・1945年~1983年はRas Tanura(サウジアラビアの最大の原油積出港)の価格・1984年以降はブレント(Brent)原油価格、直近年物価調整価格、米ドル)
↑ 原油価格(1861年~1944年は米国内平均価格・1945年~1983年はRas Tanura(サウジアラビアの最大の原油積出港)の価格・1984年以降はブレント(Brent)原油価格、直近年物価調整価格、米ドル)
↑ 原油価格(1945年~1983年はRas Tanura(サウジアラビアの最大の原油積出港)の価格・1984年以降はブレント(Brent)原油価格、直近年物価調整価格、米ドル)
↑ 原油価格(1945年~1983年はRas Tanura(サウジアラビアの最大の原油積出港)の価格・1984年以降はブレント(Brent)原油価格、直近年物価調整価格、米ドル)

データ計測開始直後の10年ほどの急上昇は物価上のぶれによるものだろうが、それでも現在の価格水準では100ドル超だったこと、1980年代の高騰時の価格は、実のところ金融危機後に生じた100ドル超と同程度の上昇ぶりだったことが分かる。

額面だけを見比べると、金融危機以降の乱高下が異様なものに感じられるが、物価動向を勘案した実質的な価格では、過去にも経験した高値水準であった。その事実は、改めて驚かされる次第ではある。

■関連記事:

日本の原油輸入元をさぐる(石油統計版)

日本国産の原油量をさぐる

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事