半世紀以上にわたる大学授業料の変遷をさぐる

↑ 大学の授業料はどのような推移を見せているのか。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・東京都区部の大学授業料は2018年時点では国立・昼間・法文経系で53万5800円、私立・昼間・法文経系で78万8656円、私立・昼間・理工系で114万4196円。

・1950年時点では東京都区部の大学授業料は国立・昼間・法文経系で3600円、私立・昼間・法文経系で8400円だった。

・消費者物価指数の変化を考慮に入れると、1950年時点では東京都区部の大学授業料は国立・昼間・法文経系で2万9803円、私立・昼間・法文経系で6万9541円になる。

国立よりも私立の方が高い大学授業料

昨今では多くの人が通い卒業することになる大学。その修学費用に関して金額の負担の大きさが問題視される一方、かつて大学へ修学していた人たちによる「大学授業料ぐらいは自分の手で稼いだものだ」とする意見が少なからず見聞きされる。そこで総務省統計局における小売物価統計調査(※)の公開値から、大学授業料の推移を確認する。

具体的には東京都区部の小売価格を参考に、半世紀強前の1950年以降、一年間を終えて年平均が算出できる直近の2017年分までの値を随時取得。さらに月次に限れば現時点で2018年4月まで取得可能であることから、その4月分を取得してこれを2018年分として適用する。

対象となるのは東京都区部の大学授業料のうち「国立・昼間部・法文経系」「私立・昼間部・法文経系」「私立・昼間部・理工系」。かつては「公立・昼間部・法文経系」も観測対象だったのだが、小売物価統計調査では2016年12月で「公立・昼間部・法文経系」を調査項目から外してしまったため、継続的なデータ取得ができなくなってしまった。そこで長期的な値が取得できる代替として「私立・昼間部・理工系」(ただし一番古い値は1967年で、他項目の1950年と比べると短期間)を用いている。なお国立の理工系も精査したいところだが、長期にわたる調査値が存在しないので取り上げていない。

↑ 大学授業料(東京都区部、年間、円)(1950年~2018年、2018年は直近月)
↑ 大学授業料(東京都区部、年間、円)(1950年~2018年、2018年は直近月)
↑ 大学授業料(東京都区部、年間、円)(1950年と2018年、2018年は直近月)
↑ 大学授業料(東京都区部、年間、円)(1950年と2018年、2018年は直近月)

大学授業料のイメージとしては、国立と比べて私立が高いとの雰囲気がある。実際にもその通りの金額推移を示している。そしてどの種類の大学でも日本が高度経済成長を始めた1970年代まではほぼ横ばい、あるいはゆるやかな上昇だったものが、それ以降はやや上昇率を高め、右肩上がりの様相を呈している。20世紀末になると上昇も緩やかなものとなるが、私立はそれ以降も上昇し続け、国公立は同額を維持することになる。記録の限りでは国立は2005年以降、10年以上同一価格を維持している。

ちなみにもっとも古い記録として残っている1950年時点では国立大学の年間授業料は法文経系で3600円、私立でも法文経系で8400円。私立の理工系は1967年時点で9万6800円。これが直近の2018年ではそれぞれ53万5800円、78万8656円、114万4196円にまで跳ね上がっている。単純に倍率試算をするとおよそ149倍・94倍・12倍である。

消費者物価の動向を考慮すると

これらはそれぞれの年における金額を示したものだが、当然物価水準は異なる。モノやサービスの値段の価格の推移を見る場合、当時の額面自身の流れだけでは無く、物価との相対的な位置づけを考慮する必要もある。例えば70年前の100円と、今現在の100円とでは価値が大きく異なるからだ。そこで消費者物価指数と連動させて価格を算出することによって、より正しい価格の実情を推し量ることにする。

具体位的には各年の授業料に、それぞれの年の消費者物価指数を反映させた値を試算することにした。消費者物価指数の直近2018年の値を基準値として、各年の授業料を再計算した結果が次のグラフ。つまりそれぞれの年における物価が2018年と同じ水準ならば、どの程度の金額になるのか、その推移を示している。

↑ 大学授業料(東京都区部、年間、2018年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(1950年~2018年、2018年は直近月)
↑ 大学授業料(東京都区部、年間、2018年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(1950年~2018年、2018年は直近月)
↑ 大学授業料(東京都区部、年間、2018年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(1950年と2018年、2018年は直近月)
↑ 大学授業料(東京都区部、年間、2018年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(1950年と2018年、2018年は直近月)

消費者物価指数を考慮しない最初のグラフと比べても、形の上では大きな変化が無い。これは各授業料の上昇率が大きく、物価の上昇をはるかに上回る割合であるからに他ならない。物価を考慮しないグラフと比べていくぶん勾配が緩やかになってはいるものの、私立では高度経済成長期以前から一律な右肩上がりを示す一方で、国立では高度経済成長期まではむしろ下がっている動きすら見受けられる。

そして現在の物価に換算した上での1950年における大学年間授業料は、国立法文経系で2万9803円、私立法文経系で6万9541円、私立理工系で36万6172円(1967年)。月次にするとそれぞれ大よそ2500円・5800円・3万1000円。この程度の金額ならそれこそ1日のアルバイト料金で満たせる額であり(私立理工系は1日分の稼ぎでは難しいが、これは1967年の値だからに他ならない)、当時大学生だった人たちが「自分達は大学授業料位は自分の手で稼いだものだ」と語っても、特に不思議では無い。一方で2018年時点の月額はそれぞれおよそ4万5000円・6万6000円・9万5000円。かなりハードな額ではある(無論これは授業料のみの話。他に入学金や教材費など多種多様な学費が必要となる)。

少なくとも金額負担の観点に限れば、大学はより一層ハードルの高い場となっていることは間違い無い。

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※小売物価統計調査

国民の消費生活上重要な財の小売価格、サービス料金および家賃を全国的規模で小売店舗、サービス事業所、関係機関および世帯から毎月調査し、消費者物価指数(CPI)やその他物価に関する基礎資料を得ることを目的として実施されている調査。

一般の財の小売価格又はサービスの料金を調査する「価格調査」、家賃を調査する「家賃調査」および宿泊施設の宿泊料金を調査する「宿泊料調査」に大別。価格調査および家賃調査については、全国の167市町村を調査市町村とし、各調査市町村ごとに、財の価格およびサービス料金を調査する価格調査地区(約27000の店舗・事業所)と、民営借家の家賃を調査する家賃調査地区(約28000の民営借家世帯)を設けている。また、宿泊料調査については、全国の99市町村から320の調査旅館・ホテルを選定している。

価格調査および家賃調査の調査市町村は、都道府県庁所在市、川崎市、相模原市、浜松市、堺市および北九州市をそれぞれ調査市とするほか、それ以外の全国の市町村を人口規模、地理的位置、産業的特色などによって115層に分け、各層から一つずつ総務省統計局が抽出し167の調査市町村を設定している。宿泊料調査では、都道府県庁所在市又は全国の観光地の中から宿泊者数の多い地域を選定し、99の調査市町村を設定している。調査市町村ごとに宿泊者数の多い旅館・ホテル等を調査宿泊施設として選定している。

価格調査については、調査員が毎月担当する調査地区内の調査店舗などに出かけ、代表者から商品の小売価格、サービス料金などを聞き取り、その結果を調査員端末に入力する。家賃調査については、原則として調査世帯を訪問し、世帯主から家賃、延べ面積などを聞き取り、同様に調査員端末に入力する。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。