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冷戦終結間際以降の主要国軍事費の動向を米ドル換算でさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 軍拡著しい中国。その動向は昔からだったのか。(写真:ロイター/アフロ)

・ストックホルム国際平和研究所の調査結果によれば全世界の軍事費総額は1兆7386億米ドル。最上位はアメリカ合衆国、次いで中国(2017年)。

・ロシアはソ連邦時代ではアメリカ合衆国に次ぐ軍事費だったが、ロシアに代わってからは大きく値を減らし、第二位の座には中国がついている。

・先進国では軍事費の伸びは緩やかで、新興国の伸び方は勢いが強い。

米ソ冷戦時代が終わるとともに国家間の軍事関係も大きな変化を見せ、軍事費も変容を示している。その実情を国際的な軍事研究機関であるストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)の調査公開値から確認する。

直近2017年において軍事関連支出が米ドル換算でもっとも大きかった国はアメリカ合衆国、次いで中国、サウジアラビアが続いている。

↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)
↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)

そこで2017年時点の米ドル換算による軍事費上位10か国における、冷戦終結間際以降の軍事費動向を確認したのが次のグラフ。各国とも少なからぬ通貨価値の変動や国内情勢の変化、経済の伸張が生じているが、特にロシアでは1991年末までソ連邦(ソビエト社会主義共和国連邦)として成立しており、以後所属共和国のいくつかが分離独立し、主要通貨ルーブルの大変動や構成地域の変容を経て現在に至る、大きな激変の中にある。グラフでは継続した形でグラフを生成しているが、厳密には半ば断絶した形であり、注意を要する。

↑ 主要国軍事費(各年米ドル換算、億ドル)(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位5か国)
↑ 主要国軍事費(各年米ドル換算、億ドル)(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位5か国)
↑ 主要国軍事費(各年米ドル換算、億ドル)(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位6~10位の国)
↑ 主要国軍事費(各年米ドル換算、億ドル)(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位6~10位の国)
↑ 主要国軍事費(各年米ドル換算、億ドル)(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位10か国から米中ロ抜き)
↑ 主要国軍事費(各年米ドル換算、億ドル)(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位10か国から米中ロ抜き)

比較をし易いよう縦軸を揃えたところ、6位以降の国の動向グラフがほぼ底辺にはいつくばる形となってしまった。それほど上位国の軍事費が圧倒的なのは理解できるが、それ以降の上位国動向がまったく分からない。そこで上位の米中、そして過去においてはアメリカ合衆国に次ぐ値を計上していたロシアをのぞいた形で縦軸を調整し、もう一つグラフを新たに生成している。

ソ連邦・ロシアはソ連邦崩壊時からロシアへの再構築の際に統括エリアが減ってしまったことに加え、通貨ルーブルが暴落したこともあり、値はソ連邦時代と比べてロシア時代は低いままとなっている。代わりに台頭したのが中国で、特に経済成長が顕著となった2005年前後からは飛躍的な伸びを示している。

米中ロをのぞいた上位陣で見ると、いずれも増加している…ように見えるが、サウジアラビアやインドのような新興国の勾配がやや大きく、伸びが急に見える。一方でフランスやイギリス、ドイツ、日本などは2007年の金融危機ぼっ発以降横ばい、あるい漸減の動きに転じているのが分かる。金融危機は軍事費への注力に関し、先進国・新興国双方にとって一つのターニングポイントとなったようだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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