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スマートフォンが伸びてパソコン落ちる…小学生から高校生のデジタル機器利用率の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ パソコンもスマートフォンもインターネットの窓口な端末に違いはないが…。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・小学生から高校生全体におけるパソコン利用率は20.9%、携帯電話は72.1%、タブレット型端末は30.1%(2017年)。

・パソコンの利用率は漸減、携帯電話やタブレット型端末は漸増。

・高校生に限ると値を確認できる2009年以降2017年に至るまで携帯電話の利用率は9割台後半を維持しているが、中身は従来型携帯電話からスマートフォンにシフトしている模様。他方、パソコンは2017年時点では25.8%のみ。

インターネットに関連したデジタル機器の急速な普及は、大人だけで無く子供達の間でも現在進行形で進んでいる。特にこの数年における子供を取り巻くデジタル環境の変化は、あまりにも急激過ぎ、状況の把握が非常に難しくなっているのが現状。今回は内閣府が2018年3月に確定報を発表した、「青少年のインターネット利用環境実態調査」(※)の報告書を基に、小学生から高校生におけるパソコンや携帯電話のようなインターネットの窓口となる機器の、子供の利用率の変化の実情」を確認する。

今件調査につき、比較できる過去のデータ9年分について「パソコンの利用者率」「携帯電話の利用者率」「スマートフォンの利用者率」「タブレット型端末利用者率」の4項目の経年推移を示したのが次のグラフ。なおスマートフォンは2009年、タブレット型端末は2009年~2011年では質問そのものが存在せず、回答値も無い。また「携帯電話」は従来型携帯電話(フィーチャーフォン、ガラケー)とスマートフォン双方を意味する。

さらに「青少年のインターネット利用環境実態調査」は2014年分から大きく仕切り直しが行われており、そのままでは前年分からの継続使用が不可能。そこでパソコンはデスクトップパソコンとノートパソコン、携帯電話はスマートフォンと従来型携帯電話、タブレット型端末はタブレット型端末以外に学習用タブレット、子供向け娯楽用タブレットを合わせて算出する。さらにスマートフォンは通常のスマートフォンに加え格安スマートフォン、機能限定・子供向けスマートフォン、契約切れスマートフォン、従来型携帯電話は従来型携帯電話以外に機能限定電話・子供向け携帯電話を加味した上で値を算出する(統計原値では、そのような仕切り分けをした値も公開されている)。

これらの値はあくまでも、それぞれの年における調査対象母集団全体に対する比率であることに注意。例えば2017年の「携帯電話利用者」は72.1%とあるので、2017年における小学生から高校生までを合わせた全員のうち、約7割が従来型携帯電話かスマートフォン(あるいはその双方)を利用していることになる。また今件はあくまでも「利用」であり、該当端末の所有権の有無は問われていない。さらにインターネット機能の利用も問われていないことに注意。

↑ パソコン・携帯電話などの利用率(小~高校生)(インターネットへのアクセスの有無を問わず)
↑ パソコン・携帯電話などの利用率(小~高校生)(インターネットへのアクセスの有無を問わず)

パソコンの使用率は2013年までは横ばい、やや漸減傾向にあったが、2014年では大いに減少している。これは設問方式の変更によるところが大きい。とはいえ、高校生までの子供において、「パソコンを利用している」との認識をしている人が2011年以降は減少していることに違いは無い。その状況は直近の2017年も継続し、ついに約2割にまで落ち込んでしまった。

一方、携帯電話の利用率は少しずつだが確実に上昇している。これは主に小学生の間でも携帯電話が浸透しつつあることの表れともいえる。この「携帯電話利用者」の大部分はスマートフォンで、実質的にスマートフォンの所有者増加が「携帯電話利用者」率を底上げしていることになる。なお上記の通り2014年以降は設問設定がいくぶん変化しているため、「メインがスマートフォン」は2014年以降においては単純にスマートフォン利用者を意味している。とはいえ、従来型携帯電話とスマートフォンの双方を利用し、前者がメインの利用スタイルも考えにくいため、実質的には同等のもの、連続性のある値と見なしても問題は無いだろう。

タブレット型端末は2012年になって初めて登場した項目であり、それ以前の経年推移を推し量ることはできない。しかしながら初年ですでに11.1%もの普及率、2年目の2013年には16.7%と確実に増加を示している。2017年には3割に届き、今後もさらに伸びていくことは容易に想像できる。保護者が所有していればそれを借りる機会は多く、パソコンよりもはるかに機動力は高く、保護者としても貸しやすいからに他ならない。

余談的な話ではあるが、対象となる小学生から高校生においては一番デジタル機器との接触率が高く、さらに購買意欲など消費方面でも強い影響力を持つ高校生に限って算出した結果が次のグラフ。

↑ パソコン・携帯電話などの利用率(高校生)(インターネットへのアクセスの有無を問わず)
↑ パソコン・携帯電話などの利用率(高校生)(インターネットへのアクセスの有無を問わず)

高校生に限ってもパソコンの利用率は2010年をピークに減少を示している(2014年の急速な落ち込みの理由は上記の通り、調査様式の問題であり、実態として1年で半減したわけでは無い)。また携帯電話ではほぼ上限に近い状態が続く一方、スマートフォン利用者が急激に増加しており、従来型携帯電話からスマートフォンへのシフトがこの数年で猛烈に生じていることが確認できる。

一方、タブレット型端末は高校生でも19.3%。必要性の観点でも、スマートフォンと比べればはるかに低いのが原因。

調査項目の変更で過去の値と厳密な連続性の無い2014年以降でも、パソコンの利用者率が漸減を継続しているのは注目に値する。授業などで使用することがあっても、本人が「利用している」との認識を持たない程度の立ち位置でしかなければ、利用者としての回答はしないことになる。未成年者のパソコン離れはネタ話では無いのは否めまい。

※2018.04.17. 11:55

グラフを正しいものに差し替えました。お詫び申し上げます。

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※青少年のインターネット利用環境実態調査

直近年度分は2017年11月3日から12月3日にかけて2017年11月1日時点で満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(保護者は訪問配布訪問回収法)で行われたもの。時間の調整ができない場合のみウェブ調査法(保護者は加えて郵送回収法)を併用している。有効回答数は青少年が3288人(うちウェブ経由は122人)、保護者は3469人(うちウェブ経由は44人、郵送回収法は26人)。過去の調査もほぼ同じ形式で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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