年金生活をしているお年寄り世帯のお財布事情をさぐる

↑ 余生を楽しむお年寄り世帯。そのお財布事情は。(写真:アフロ)

・2017年時点で60歳以上の単身無職世帯の家計における収入は年金が約10.7万円、その他収入が約0.7万円、貯蓄切り崩しが約4.0万円。高齢夫婦無職世帯ではそれぞれ約19.2万円、約1.7万円、約5.5万円。

・60歳以上の単身無職世帯の消費支出では食料費が約1/4に達している。住居費が1割強。

・単身世帯よりも夫婦世帯の方が、共有部分のコストが節約できる傾向がある。

生活を支えるのは支給される年金と貯蓄の切り崩し

定年退職を果たし、これまでの蓄財と年金で生活をしている高齢者層の家計事情は、案外知る機会が少ない。節約の対象や趣味への消費、仕送り額など個々の項目の動向は分かっても、家計全体としてどのようなやりとりが行われているのかは知る由もない。そこで総務省統計局が2018年2月にデータ更新(2017年・年次分反映)を行った「家計調査(家計収支編)調査結果」の公開値を基に、その内情を確認する。

生涯現役の人(自営業や企業役員、農業従事者など)、あるいは一度定年を迎えて再就職を果たす人もいるが、多くの人は60~65歳で定年を迎え、その後はそれまでの貯蓄を切り崩したり、年金(今件各項目では「社会保障給付」に相当)で日々の生活をやりくりをする。「家計調査」では実例として、2017年における平均的な「60歳以上の単身無職世帯(元々独身、あるいは配偶者に先立たれたか離別して一人暮らしをしている60歳以上の無職の人)」「高齢夫婦無職世帯(夫は65歳以上、妻は60歳以上でその世帯には2人きり・無職。子供などは同居をしていない)」それぞれのパターンにおける家計収支が掲載されている。そのうち収入面(※)を抽出し再構築したのが次のグラフ。

↑ 高齢者世帯の家計・収支面(2017年)
↑ 高齢者世帯の家計・収支面(2017年)

例えば単身世帯の場合は年金が約10万7000円。それに加えて毎月約7000円の「その他収入」(「無職」が前提なので、利息なり証券の配当などと考えられる。あるいは不動産収入も平均化された上で加算されているはず。ただし「仕送り」や「資産収入」を収入としている人は少数)。あわせて11万円強が実質的な収入。しかし非消費支出(税金・社会保険料など)と消費支出 (世帯を維持していくために必要な支出)は合わせて15万4742円のため、足りない4万715円をねん出する必要がある。基本的にはグラフの説明の通り、これまで貯めてきた貯蓄からの切り崩しなどで充当される。年間で約49万円。

同様に高齢夫婦無職世帯の場合は、年金が約19万円強、その他の収入が約1万7000円。貯蓄の切り崩しが約5万4000円で合わせて26万3717円が、月あたりの収入合計額となる。

単身高齢世帯の支出の内訳

収入面で注意すべき点は、どちらのパターンの世帯でも、収入全体に対して毎月数割の貯蓄切り崩しをしていること。他方、支出面のグラフ化は、例えば60歳以上単身無職世帯の場合は次のようになる。今件は消費支出の内訳であり、非消費支出(税金や社会保険料)が別途発生していることに注意。

↑ 60歳以上の単身無職世帯における消費支出の内訳(2013~2017年)
↑ 60歳以上の単身無職世帯における消費支出の内訳(2013~2017年)

これを見ても分かるように、新たに貯蓄はしていないので、一方的に貯蓄額が減ることになる。

比率動向を見ると、数年では大きな変化は無いが、「交際費」などゼロでは困るがある程度削減対象となりうる項目の比率が漸減している。他方、ここ数年高騰が続いたものの2014年に入って低下し始めた電気料金を反映してか、「光熱・水道」の比率が増加から減少に転じるものの、「食料」はここ数年の価格上昇や食生活の変化に伴い増加を示している。単に生活が厳しくなったので食費比率が上がっていると解釈するよりは、食生活の充足のための支出が増えていると考えれば道理は通る。また時間の短縮や手間のショートカットのために、対価でそれらの手段となる惣菜を手に入れるとの考え方もできる。

「貯蓄率」は大きな問題ではないので、その項目に関する詳細の精査は省略する。一応計算しておくと、単身世帯はマイナス40.1%、夫婦世帯はマイナス30.1%となっている。黒字は発生せず貯蓄を切り崩しているのだから当然マイナスが生じるのだが、可処分所得の3~4割程度が貯蓄切り崩しでまかなわれている実態を改めて知ることができよう。

やや余談ではあるが、高齢者の単身無職世帯と夫婦世帯の支出の違いを確認しておく。

↑ 60歳以上の無職世帯における消費支出の内訳(2017年、単身と夫婦)
↑ 60歳以上の無職世帯における消費支出の内訳(2017年、単身と夫婦)

実金額では無く、消費支出内の比率の比較であり、そのまま並べるのはやや無理があるかもしれない。しかしながら生活様式の差異を推し量るには十分な精度である。

各項目を眺めると、「二人分が必要な項目(食料、保健医療)は単身世帯より夫婦世帯の方が比率が上」「二人である程度共用できる項目(住居、光熱・水道など)は単身世帯より夫婦世帯の方が比率が下」との結果が出ている。そのまま約2倍(一人か、二人かの違い)の比率では無いのは、総額が違うからに他ならない。

これらの違いから、少なくとも金銭面では、夫婦世帯の方が余裕のある生活ができているように見える。特に住居費の違いは大きい。高齢者関係の論説を読み説く際、そしてライフプランの構築の時に、この事実を覚えておいて損はあるまい。

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※収入面

貯蓄の切り崩しは厳密には一般的な収入とは別物として取り扱われる。本文中で「実質的な収入」と表記しているのもそのため。ただし今件では貯蓄の切り崩しは「不足分」項目の主要素ではあるもののすべてでは無く、また、支出のために調達した現金との観点で収入扱いをしている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。