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米国以外で防衛協力や交流相手として役立つ国はどこだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 米国以外との防衛協力や交流相手、どこが日本にとってプラスとなるか。(写真:アフロ)

・米国以外との防衛協力・交流を行うことが日本の安全と平和に役立っていると考えている人は2018年時点で8割近く。

・具体的な国や地域との防衛協力・交流が日本の安全と平和に役立つかについては、中国を挙げた人が43.8%、東南アジア諸国が42.2%、韓国が41.1%。

・年齢階層別では欧州諸国などは若年層、アジア・太平洋地域などは高齢層の回答率が高い。

日本と米国との間の日米安保条約は、日本の安全と平和に大いに貢献している。しかし日本が防衛面で協力・交流をしている国や地域は、米国だけに限らない。いかなる国との関係が役立つと評価されているのだろうか。内閣府が2018年3月に発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査(※)の結果報告書の内容から、米国以外の国などとの間における防衛協力・交流が、日本にとって安全・平和面で貢献しているか否かに関する評価を確認する。

日本は米国以外の国との間にも個々の関係に応じた協力体制を築き、交流を実施している。これらの行為に関して、「回答者が」日本の安全と平和に役立っているか否かの観点でどのように思っているかを尋ねた結果が次のグラフ。国を特定していないこともあるが、8割近くの人は肯定している。

↑ 米国以外との防衛協力・交流を行うことについての意識(2018年)(日本の安全と平和に役立っているか否か)
↑ 米国以外との防衛協力・交流を行うことについての意識(2018年)(日本の安全と平和に役立っているか否か)

役立っていないとの意見は2割近くに留まっている。

それでは具体的にどの国や地域との関係が、日本の安全と平和に貢献していると思われているのか。(どちらかというと)役立っていると回答した人(「役立っている」派)に複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。具体的名称を挙げている選択肢のみを抽出している。

↑ どの国・地域との防衛協力・交流が日本の安全と平和に役立っているか(2018年)(「役立っている」派回答者限定、複数回答)(具体名明記選択肢のみ)
↑ どの国・地域との防衛協力・交流が日本の安全と平和に役立っているか(2018年)(「役立っている」派回答者限定、複数回答)(具体名明記選択肢のみ)

トップの回答率は中国、続いて東南アジア諸国(具体的国名の表記は無し)が続く。昨今では領土問題で対立が続く中国と他の東南アジア諸国双方が上位に上がる実情は、回答者側の色々な思惑を想起させる。領土問題といえば日本との対立でしばしば報じられる韓国も名が挙がっているが、こちらは対北朝鮮問題で防衛関係を強化しておく必要があるのが主要因だと考えられる。あるいは中韓との間においては、不測の事態に備えるために平時からの連絡強化の類は欠かせないとの視点かもしれない。

次いで欧州諸国、オーストラリア、ロシア、インドと続く。ロシアは位置的にはオーストラリアやインド、欧州と比べれば近いといえるが、冷戦時代において長年にわたり敵対関係にあったことも影響してか、肯定的な意見は少なめに留まっている。

「防衛協力・交流が日本の安全と平和に役立っている」とする対象国・地域だが、属性による違いが見受けられる。男女別では男性が東南アジア諸国やオーストラリア、インドに好意的なのに対し、女性は中国や韓国、ロシアへの好感度が高い。

↑ どの国・地域との防衛協力・交流が日本の安全と平和に役立っているか(2018年)(男女別)(「役立っている」派回答者限定、複数回答)(具体名明記選択肢のみ)
↑ どの国・地域との防衛協力・交流が日本の安全と平和に役立っているか(2018年)(男女別)(「役立っている」派回答者限定、複数回答)(具体名明記選択肢のみ)

男女別で順位を見ると、男性は東南アジア諸国、中国、韓国、オーストラリア、欧州諸国、インド、ロシア。女性は中国、韓国、東南アジア諸国、欧州諸国、ロシア、オーストラリア、インド。価値観の違いや個々の国に対して抱いている基本部分となるイメージの違いが表れているのだろうか。特に女性では韓国の値が伸びて東南アジア諸国以上を示しているのが興味深い。

↑ どの国・地域との防衛協力・交流が日本の安全と平和に役立っているか(2018年)(年齢階層別)(「役立っている」派回答者限定、複数回答)(具体名明記選択肢のみ)
↑ どの国・地域との防衛協力・交流が日本の安全と平和に役立っているか(2018年)(年齢階層別)(「役立っている」派回答者限定、複数回答)(具体名明記選択肢のみ)

年齢階層別では東南アジア諸国や韓国、オーストラリア、インドへの回答率はおおむね高齢層ほど高く、欧州諸国、ロシアは若年層ほど高い値が出ている。西洋は若年層・東洋は高齢層と仕切り分けができるだろうか。

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「安保は日本の平和と安全に役立つ」8割近く

※自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査

2018年1月11日から21日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた18歳以上の日本国内に在住する日本国籍を持つ人に対し、調査員による個別面接聴取法で行われたもので、標本数は3000人、有効回答数は1671人。有効回答者の男女構成比は781対890。年齢階層別構成比は18~29歳が133人、30代が175人、40代が271人、50代が265人、60代が361人、70歳以上が466人。

過去の調査もほぼ同様の条件で行われているが、今回調査の2018年は年齢の下限が18歳、前回調査の2015年までは20歳となっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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