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8割近くは「安保は日本の平和と安全に役立つ」と考えている

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 日米安保の内容は外務省などのサイトで容易に確認できる(外務省公式サイトより)

・日米安保が日本の平和と安全に役立っていると思う人は2018年では8割近く。

・男性、高齢層の方が「日米安保が日本の平和と安全に役立っている」と強く思っている人は多い。

・経年推移では大よそ日米安保が日本の平和と安全に役立っていると思う人は増加しつつある。

日本の戦後における外交・政治・軍事さらには経済の面で大きな役割を果たした条約の一つに「日米安全保障条約」がある。その条約に関して内閣府が2018年3月に発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査(※)によると、77.5%の人が日本の平和と安全に役立っていると答えていることが明らかになった。役立っていないとの否定的意見を持つ人は15.7%に留まっている。

「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」、通常は「日米安全保障条約」「日米安保」と呼ばれる日米間の条約は、両国の同盟関係の根幹となる条約として知られている。その条約について、「日本の」平和と安全に役立っているか否かを5段階評価で聞いたところ、「役立っている」「どちらかといえば役立っている」を合わせた肯定派は77.5%を占める結果となった。逆に否定派(「どちらかといえば役立っていない」「役立っていない」の合計)は15.7%に過ぎない。

↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役だっていると思うか(2018年)
↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役だっていると思うか(2018年)

結果を属性別に見ると、女性の否定感、高齢層の留保感(「分からない」の回答率の高さ)がやや強いように見受けられる。軍事的な話には拒否反応を示しやすい属性でもあることから、この動きは当然のようにも思える。「役立っている」との強い肯定派の値は大よそ若年層ほど低めで高齢層ほど高い。

また否定派は50代まではほぼ同率、60代以降は「どちらかといえば役立っていない」が減る代わりに「役立っていない」が増えるという、印象的な動きをしているのも注目に値する。同年齢階層では「役立っている」との意見も増えていることから、まさに意見の対立度合いが強いものとなっているのだろう。

経年推移を見ると、湾岸戦争時に大きな動き、具体的には否定派の増加・肯定派の減少が確認できるが、それ以外は大よそ肯定派の増加が継続している。否定派は大きな動きを見せず、ほぼ横ばいのまま推移している。

↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役立っていると思うか(経年推移)
↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役立っていると思うか(経年推移)

2012年の調査結果では肯定派がはじめて8割を超えた。2015年ではさらに増加を示し、過去最高の82.9%に達した。この動きは見方を変えると「分からない」、あるいは判断留保の人の割合が減ってきたことを意味する。時間の経過とともに安保の意味合いが浸透し、はっきりと判断をする、特に肯定する人が増えてきたと考えるのが妥当ではある。

直近の2018年では前回調査から肯定派が減り、否定派が増えている。公開値だけでは具体的思惑を推し量ることは難しいが、北朝鮮情勢や中国の具体的行動のような、日本周辺状況に関して抑えが利かなくなっている実情を見て、安保ではその威力が足りないのでは、平和維持には役立っているとは言い切れないからこそ、現状のような危機感が生じているのではないかとの認識が増えた結果である可能性は否定できない。

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※自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査

2018年1月11日から21日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた18歳以上の日本国内に在住する日本国籍を持つ人に対し、調査員による個別面接聴取法で行われたもので、標本数は3000人、有効回答数は1671人。有効回答者の男女構成比は781対890。年齢階層別構成比は18~29歳が133人、30代が175人、40代が271人、50代が265人、60代が361人、70歳以上が466人。

過去の調査もほぼ同様の条件で行われているが、今回調査の2018年は年齢の下限が18歳、前回調査の2015年までは20歳となっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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