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パートやアルバイトの時給の地域格差をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ パートやアルバイトの時給は地域別でどれほどの違いが生じているのか。(写真:アフロ)

・2017年における短時間労働者の平均時給は男性1154円、女性1074円。

・男性の最大値は東京の1328円。次いで千葉や神奈川、長野、大阪で1200円台。東京近辺の関東地域を筆頭に、近畿圏など人口密度の高い地域で、やや高めの値が出ているように見受けられる。

・女性では最大値が東京の1293円だが、神奈川の1164円が続く。男性よりも関東・近畿圏の高値傾向がはっきりと表れている。

フルタイムの労働者の賃金同様、パートやアルバイトのような短時間労働者の時給も地域による差が生じている。今回は厚生労働省が2018年2月に発表した、賃金関連の情報を調査集積した結果「賃金構造基本統計調査」の最新版「平成29年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況」の報告書を基に、パートやアルバイトが該当する「短時間労働者」の地域別時給実情について確認する。

今回取り上げる「短時間労働者」とは具体的には「同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、あるいは1日の所定労働時間が同じでも、1週の所定労働日数が少ない労働者」と定義づけられている。例えば「就業日はフルタイム出勤。しかし出勤日は月水金のみ」「就業日は一般労働者と同じ平日すべて。でも午前中は休みで午後のみの出勤」の場合は「短時間労働者」に該当する。また契約社員の大部分は正社員と同じ時間帯で働くことから「一般労働者」に該当し、今回の「短時間労働者」には該当しない。

また「所定内給与額」とは、あらかじめ定められている支給条件・算定方法によって支給された現金給与額から、超過労働給与額(要は残業代)やボーナスなどを除き、所得税などを控除する前の額を指す。いわゆる賃金、今件ならば短時間労働者を対象としているので時給とも呼ばれているもの。

次に示すのは、男女それぞれの短時間労働者における平均時給の地域別動向。企業規模別で差異が大きく生じ得るため、今回は企業規模10人以上の事例に限定した(公開値の種類もこの区分の方が多い)。

↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(円、2017年、企業規模10人以上)(男性)
↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(円、2017年、企業規模10人以上)(男性)
↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(円、2017年、企業規模10人以上)(女性)
↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(円、2017年、企業規模10人以上)(女性)

産業種類による時給は大きく異なるため、高い時給を支払う産業が多い地域ほど高めの値をつけることになる。無論地域の物価や労働市場なども加味される。そのため今回の各値はあくまでも指標レベルのものと見るのが無難。

男女別に見ると、男性の最大値は東京の1328円。次いで千葉や神奈川、長野、大阪で1200円台をつけている。東京近辺の関東地域を筆頭に、近畿圏など人口密度の高い地域で、やや高めの値が出ているように見受けられる。他方、低い地域は沖縄の910円、秋田の966円など。

女性では最大値が男性同様に東京で1293円だが、神奈川の1164円が続く。男性よりも関東・近畿圏の高値傾向がはっきりと表れており興味深い。最安値は青森の889円。

一方、【厚生労働省の最低賃金制度に関する公式ページ「労働基準 > 賃金 > 最低賃金制度」】で確認してほしいが、最低賃金法では都道府県別・産業別で時給単位の最低賃金を法的に定めている。例えば東京都の場合は時給958円(2017年10月時点)となっている。

↑ 地域別最低賃金改定状況(円、2017年度、時間あたり)
↑ 地域別最低賃金改定状況(円、2017年度、時間あたり)

そこでこの最低賃金と、平均賃金の差を算出したのが次のグラフ。多分に数字遊びの感はあるが、どれだけ法的最低基準から賃金が上乗せされているのか、その目安となる。

↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(最低賃金からの上乗せ額)(円、2017年、企業規模10人以上)(男性)
↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(最低賃金からの上乗せ額)(円、2017年、企業規模10人以上)(男性)
↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(最低賃金からの上乗せ額)(円、2017年、企業規模10人以上)(女性)
↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(最低賃金からの上乗せ額)(円、2017年、企業規模10人以上)(女性)

男性ではもっとも大きな上乗せ額を示したのは長野の416円、次いで青森の401円。2015年の結果では福島や茨城の上乗せ額が群を抜いており、「震災関連の短時間労働者に絡んだ需給関係で、人材確保のための結果が数字となって表れているのだろう」と判断できる結果だったが、今回の2017年分では青森、福島や茨城で周辺地域と比べて高い値が示されており、その傾向がまだ続いている雰囲気はある。それを除けば地域別の傾向だったものは特に見られない。

↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(最低賃金からの上乗せ額)(円、2015年、企業規模10人以上)(男性)
↑ 短時間労働者における1時間あたり所定内給与額(最低賃金からの上乗せ額)(円、2015年、企業規模10人以上)(男性)

他方女性では東京が群を抜き、和歌山や徳島が続いている。特に地域別傾向は見出しにくいのが実情ではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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