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4マスはすべてマイナス、インターネットはわずかだがプラスに(博報堂売上動向:2018年2月分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 媒体が不調だと広告の売上も不調に。新聞は厳しいとの話もあるが…。(写真:アフロ)

・博報堂DYHD(※)の2018年2月分の売上は前年同月比で4マスはすべてマイナス。新聞とラジオは1割を超えるマイナス。

・インターネットはわずかにプラス。

・毎年2月に限り経年変化を見ると2010年を底に回復基調だが、2016年をピークにそれ以降はやや下落。

4マスは全部マイナス

日本の広告代理店で売上では大手で知名度も高い博報堂DYホールディングス。同社の月次売上で直近分となる2018年2月分が発表された。その内容を精査する。

まずは主要部門ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 博報堂DYHDの2018年2月分部門別売上高前年同月比
↑ 博報堂DYHDの2018年2月分部門別売上高前年同月比

昔ながらの主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌(いわゆる4マス、4大従来型メディア)の動向を確認すると、今回月は紙媒体の新聞と雑誌は双方ともマイナス、ラテと呼ばれる電波媒体はテレビとラジオ双方がマイナス。結果として全部がマイナスとなった。新聞が2ケタ台の下げ幅は毎度のことではあるが、ラジオがマイナス13.8%と大きめの下げ幅なのが気になる。テレビはかろうじて1ケタ台の下げ幅だが、額面そのものが大きいだけに、全体に与える影響を考えれば憂慮すべき結果ではある。

インターネットはわずかではあるがプラス。前年同月における前年同月比がプラス16.4%と大きな上げ幅だったため、その反動による影響が生じて限定的なプラスに留まった感は否めない(2年前同月比を試算するとプラス19.5%)。

一般広告はアウトドアメディアが4割超の大幅なプラス。前年同月における前年同月比はマイナス2.2%で、反動がわずかに影響しているとはいえ、大きな躍進ぶりがうかがえる。なおアウトドアメディアの内容は「屋外広告、交通広告、折込広告などの掲出料および制作費」となっている。

各年2月における売上総額の推移

次のグラフは博報堂DYHDの2006年以降における、今回月となる2月を基準にした毎年2月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を持ち、売上に大きく影響を与える事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。

↑ 博報堂DYHD月次売上総額推移(各年2月、億円)
↑ 博報堂DYHD月次売上総額推移(各年2月、億円)

ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。1月動向に限ると、リーマンショックによる不況で落ち込んだ2010年を底に順調な回復ぶりを見せていたが、2016年をピークにやや失速の動きに転じている。

次に各部門の具体的な売上高を掌握できるグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や部門間の違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 博報堂DYHDの2018年2月における部門別売上高(億円)
↑ 博報堂DYHDの2018年2月における部門別売上高(億円)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を計上しているものの、売上金額=市場規模としては他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしか無い。また、4マスとインターネット以外の一般広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。テレビだけで全売上の4割強もの額面を示している。

今件解説記事の体裁だが、2017年12月分までと比べると随分とすっきりとした形となった。これは電通において2017年12月分を最後に、月次開示を取りやめることになったのが原因。売上規模は電通の方が博報堂DYHDよりも上のため、日本の広告業界の動向を推し量るのには、博報堂DYHDのみでは少々ぶれが大きいのだが、無いものは仕方があるまい。

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※グラフなどにおける社名や部門の表現について

部門名は一般の呼ばれ方と異なるものもあるが、「インターネットメディア」とはインターネット広告、「一般広告」とは4マスとインターネット以外の、従来型の広告を意味する。

本文内部やグラフでは一部で「博報堂DYホールディングス」を「博報堂DYHD」と表記している。また同社は「博報堂」「大広」「読売広告社」と「博報堂DYメディアパートナーズ」を完全子会社として傘下に置く広告グループの持株会社で、今記事では公開されている「博報堂」「大広」「読売広告社」の広告代理店子会社3社の売上を合算して各種計算を行い、博報堂DYホールディングスの売上としている。また、記事中の表記も原則として「博報堂」は「博報堂DYホールディングス」を意味する。子会社の博報堂単体の動向では無いことに注意。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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