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日本の学歴と失業率との関係を男女別にさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 面接待ちの人達。同じ学歴でも失業率は男女でどれほどの違いがあるのか。(写真:アフロ)

・どの学歴でも2009~2010年以降失業率は低下の傾向にある。

・男女別では大よそ男性の方が失業率が高い。しかし2017年に限れば大学・大学院卒で男女間の差は無くなっている。

・学歴による失業率の違いは男性の方が大きい。

世間一般には高学歴ほど就職は容易で、また失業もし難いとのイメージがある。そのイメージが確かなものかを確認するデータの一つが、総務省統計局が毎年発表している労働力調査。その最新年次平均値となる2017年分が先日発表された。今回はその値などを基に、学歴別の失業率の実情を、男女別に確認していく。

「完全失業率」とは「完全失業者÷労働力人口×100(%)」で算出される値。そして総務省統計局では「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」の3条件すべてに当てはまる人を「完全失業者」と認定している。現在失職中で仕事があればすぐに従事することが可能だが、仕事を探そうとはしていない人は完全失業者には該当しない。

まずは全体の変移。

↑ 学歴別完全失業率(卒業者)
↑ 学歴別完全失業率(卒業者)

グラフを見る限りでは2009~2010年以降わずかずつだが確実に、完全失業率は改善の方向に向かっている(減少している)。最新値の2017年分では2016年に続き全学歴において、金融危機ぼっ発直前の最良値以上のよい値を示したこととなり、少なくとも失業率の観点では、景況感は回復状態に手が届いたと判断できる(無論、正規・非正規問題や定着率の問題もあるが、それはまた別の話)。

続いて男女別にそれぞれ、学歴別のグラフを生成する。

↑ 学歴別完全失業率(卒業者)(男性)
↑ 学歴別完全失業率(卒業者)(男性)
↑ 学歴別完全失業率(卒業者)(女性)
↑ 学歴別完全失業率(卒業者)(女性)
↑ 学歴別完全失業率(卒業者、男女別)(2017年)
↑ 学歴別完全失業率(卒業者、男女別)(2017年)

大まかに分けて失業率が(高)「小学・中学・高校・旧中」「全体値」「短大・高専」「大学・大学院」(低)の順となるのは、男女合わせた全体値と変わらず。一方で、

・失業率は全体的に男性の方が高い(折れ線グラフにおける縦軸の区切りの違いに注意)。

・学歴による失業率の違いは男性の方が大きい。

・他の階層が2007年以降失業率を上げる中、男性の「大学・大学院」のみが失業率を下げていた。しかし2009年にはその例外も無くなった。

・男女とも2017年は2016年に続き、失業率の改善の動きが見られる。詳しく見ると、男女ともに「大学・大学院」の改善が顕著なものとなっている。男性に限れば「小学・中学・高校・旧中」の改善も著しい。

などの傾向が見られる。

これらのデータはあくまでも数字的に「学歴が高い方が失業率が低い傾向にある」との失業率の一側面を示したのみの話。多分に相関関係だけで無く因果関係も類推できたとしても、「高学歴万能主義」の肯定・否定とは別次元の問題であることに気をつけてほしい。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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