4マスはテレビのみプラス、インターネットは2割以上のプラスに(博報堂売上動向:2018年1月分)
・博報堂DYHD(※)の売上は前年同月比で4マスではテレビのみがプラス。新聞とラジオは1割を超えるマイナス。
・インターネットは2割を超えるプラス。
・毎年1月に限り経年変化を見ると2010年を底に回復基調。
4マスはテレビのみプラスであとは全部マイナス
日本の広告代理店で売上では大手で知名度も高い博報堂DYホールディングス。同社の月次売上で直近分となる2018年1月分が発表された。その内容を精査する。
まずは主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。
昔ながらの主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌(いわゆる4マス、4大従来型メディア)の動向を確認すると、今回月は紙媒体の新聞と雑誌は双方ともマイナス、ラテと呼ばれる電波媒体はラジオがマイナスでテレビがプラス。新聞が2ケタ台の下げ幅は毎度のことではあるが、ラジオがマイナス13.0%と大きめの下げ幅なのが気になる。それらと比べ、テレビの堅調さは大いに評価をしたい。
インターネットは2ケタ台と大きなプラス。過去の記録をたどると前年同月でもその時の前年同月比で大きなプラス幅(27.8%)を計上しており、反動によるマイナスへの影響を振り払い、さらに上昇した実態がうかがえる(2年前同月比を試算するとプラス55.0%)。この傾向は数か月継続した動きで、インターネット広告の成長ぶりが再確認できる。
一般広告はアウトドアメディアがやや軟調だが、それ以外はプラス。特に「その他」項目の堅調さが目に留まる。
各年1月における売上総額の推移
次のグラフは博報堂DYHDの2006年以降における、今回月となる1月を基準にした毎年1月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を持ち、売上に大きく影響を与える事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。
金融危機からリーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。1月動向に限ると、リーマンショックによる不況で落ち込んだ2010年を底に順調な回復ぶりを見せている。
次に各部門の具体的な売上高を掌握できるグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や部門間の違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。
インターネットは毎月目覚ましい成長率を計上しているものの、売上金額=市場規模としては他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしか無い。また、4マスとインターネット以外の一般広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。テレビだけで全売上の4割強もの額面を示している。
2017年12月分までと比べると随分とすっきりとした形となった。これは電通において2017年12月分を最後に、月次開示を取りやめることになったのが原因。売上規模は電通の方が博報堂DYHDよりも上のため、日本の広告業界の動向を推し量るのには、博報堂DYHDのみでは少々ぶれが大きいのだが、無いものは仕方があるまい。
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※グラフなどにおける社名や項目の表現について
項目名は一般の呼ばれ方と異なるものもあるが、「インターネットメディア」とはインターネット広告、「一般広告」とは4マスとインターネット以外の、従来型の広告を意味する。
本文内部やグラフでは一部で「博報堂DYホールディングス」を「博報堂DYHD」と表記している。また同社は「博報堂」「大広」「読売広告社」と「博報堂DYメディアパートナーズ」を完全子会社として傘下に置く広告グループの持株会社で、今記事では公開されている「博報堂」「大広」「読売広告社」の広告代理店子会社3社の売上を合算して各種計算を行い、博報堂DYホールディングスの売上としている。また、記事中の表記も原則として「博報堂」は「博報堂DYホールディングス」を意味する。子会社の博報堂単体の動向では無いことに注意。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。