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中学校3年では公立は私立の約1.9倍…塾や家庭教師代の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 塾や家庭教師のコストの実情は?(写真:アフロ)

・「学校外活動費」は私立では小学校が、公立では中学校がピーク。

・私立小学校が大きな額なのは学習塾だけで無く学習塾以外の塾に通わせるケースが多いのも一因。

・中学校3年生では唯一公立が私立を上回る。学習塾費が私立を大きく上回るため。

子供の教育には何かとお金がかかるもの。家庭教師代や塾の月謝、図書費などで構成される「学校外活動費」の実情を、文部科学省が2017年12月に発表した「子供の学習費調査」の結果から確認する。

直近2016年度における学習費総額は総じて私立の方が高い。また子供が年を重ねるほど総額が上がるのでは無く、公立は中学校、私立は小学校の方が(他の学校種類よりも)多くの学習費がかかる。これは両者とも主に「学校外活動費」がふくらむのが原因(「学習費総額」は「学校教育費(授業料やPTA会費、制服、遠足代など)」「学校給食費」「学校外活動費(家庭内学習費や各種塾月謝、図書費など)」で構成されている)。

↑ 学校種類別子供の学習費総額(万円/年)(2016年度)
↑ 学校種類別子供の学習費総額(万円/年)(2016年度)

今回スポットライトをあてるのは、この「学校外活動費」。

まずは学年別の「学校外活動費」の推移。私立では小学校がピークで、公立ではむしろ中学校の方が多少ながらも額が高めになる。意外かもしれないが、「学校外活動費」においては高等学校は全般的に額は抑えられており、小中学校よりも低い。

↑ 年齢・学年別学校外活動費額(2016年度時点)(万円)
↑ 年齢・学年別学校外活動費額(2016年度時点)(万円)

「学校外活動費」には学習塾や家庭教師以外に、ピアノ、各種図書品、習字やそろばん、英会話教室などの教養的な塾、そして各種スポーツや芸術文化活動方面での塾の月謝も含まれる。私立小学生が特にふくらんでいるのは、一般の学習塾に加えてこれら「学習塾”以外”の塾」に通わせている事例も多いのが要因。

↑ 小学6年生における学校外活動費(円)(2016年度)
↑ 小学6年生における学校外活動費(円)(2016年度)

「学習費総額」同様、「学校外活動費」に限っても私立が公立以上に額面が大きいのは見ての通りだが、唯一中学3年生では「公立が私立を上回る」現象が起きている。これは主に補助学習費(もっと詳細を述べれば「学習塾費」)の額において、公立が私立を大幅に上回るため。「学校外活動費」の逆転までには至らないものの、「学習塾費」では中学2年でも公立が私立以上の額面を示している。

↑ 中学校における学年別校外活動費のうち補助学習費内の学習塾費(万円)(2016年度)
↑ 中学校における学年別校外活動費のうち補助学習費内の学習塾費(万円)(2016年度)

学習塾費用の点で公立中学3年生が跳ねあがる理由について、報告書では一切触れていない。推測でしか無いが、小中学校と異なり、はじめての非義務教育の教育機関となる高等学校の受験のためには、公立中学3年生は私立と比べ、学習塾で学校の学習内容を補完する必要性に強く迫られている。そのため学習塾に通う人が多く、場合によっては複数か所への通塾もあり、額面が大きく底上げされてしまうのだろう。

実際、「学校外活動費」でも、その中の「補助学習費」でも、公立は中学校3年生が最高額を示している。公立学校生(を持つ保護者)の高校進学への気合いの入れ方が、この金額の動向からも推し量ることができよう。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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