アジア太平洋地域の平和と安定のため米国は日本にどれほど期待しているかをさぐる
・日本と米国はアジア太平洋地域の平和と安定のために緊密に協力すべきと考えている米国人は、一般人も有識者も9割以上。
・日本はアジア太平洋地域の平和と安定のために、より積極的な役割を果たしていくべきと考えている米国人は、一般人も有識者も8割以上。
中国の経済的発展と軍事的影響力の強化に連れ、アジア太平洋地域では今世紀に入ってから前世紀とは比べ物にならないほどに緊張が高まっている。情勢の変化に伴い米国も憂慮の念を強めており、同地域の同盟国である日本への期待も並々ならぬものがある。今回は外務省が2017年12月に同省公式サイト内において発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から、その期待の一端を確認する。
まずは日本と米国はアジア太平洋地域の平和と安定のために、緊密に協力すべきと思っているか否か。「安全」では無く「安定」であることに注意。つまり現状…厳密には昨今の騒乱的情勢が起きる以前の比較的安定した状況を継続させるため、日米が緊密に協力し、状況の改善を模索すべきか否か。これには直近年度では一般人で91%、有識者では96%の人が同意を示した。
今項目は2014年度から新設されたもので3年分のみが確認可能。昨今では緊張の度合いを増しているとの認識が強まり、新たに確認項目として付け加えられることとなったのだろう。一般人の方が低めの値は出ているものの、双方とも9割以上の同意者で占められており、日本との緊密な協力体制を望んでいることが分かる。
それでは単なる協力姿勢だけで無く、これまで以上の施策などによる積極的な役割を、日本は果たすべきであると米国側は考えているのだろうか。これについては単純な密接度の高い協力体制の確認と比べるとやや賛意者は減るものの、8割台の人が同意を示す結果となった。
やはりこちらの項目でも有識者の方が同意率は高い。「より積極的な役割」が何を意味するのかは調査結果からはうかがい知ることはできないが、事態打開のための行動に関して、もっと前に出るべきだとの思惑であるとの認識で違いは無いだろう。
ただしそれが「現状ではひかえめだからもっと積極的に動いてもいいのだが」なのか、「米国はこれ以上手出しできない(したく無い、係わりたく無い)ので、日本にもっと前に出てもらい米国は後ろに下がりたい」を意味するのか、今調査項目だけでは判断が難しい。また、そこまで深読みすること無く単純に、このままか積極姿勢かどちらかといえば後者の方が、程度の意味かもしれない。
ともあれ米国においては一般人も有識者も、アジア太平洋地域の平和と「安定」のため、日本との協力関係を維持強化しつつ、日本へは一層の積極姿勢を望んでいることは間違いなさそうだ。
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※米国における対日世論調査
外務省がニールセン(Nielsen)社に委託し、米国内において電話により2017年3月に実施されたもので、有効回答数は一般人1005人(18歳以上)・有識者200人(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。