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「日本は安保理の常任理事国入りをすべき」米有識者の7割近くが賛成

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 安保理の常任理事国はそれなりの権限を持つものではあるが…(写真:アフロ)

・「日本の常任理事国入り」に賛成の米有識者は69%。

・賛成派の理由のトップは「常任理事国入りした日本が国際平和と安全に果たす今後の役割に期待するから」。

・反対派の理由のトップは「そもそも安保理の常任理事国を増加すべきではないと考えるから」。

「日本の常任理事国入り」に賛成する米有識者は69%

日本が安全保障理事会における常任理事国入りするのを望む声は、米国ではどれほどの大きさなのだろうか。その実情を外務省が2017年12月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。

国際連合の主要機関の一つ、安全保障理事会(安保理)は、第二次世界大戦における戦勝大国の米国・ロシア(かつてはソ連邦)・イギリス・フランス・中国で構成される常任理事国と、非常任の理事国10か国(2年毎に改選)で構成されている。今世紀に入ってから世界情勢の変化に伴い、前者の常任理事国について、数か国を追加すべきではとの議論が持ち上がっている。

これに絡み、日本が新たに国連安保理の常任理事国となるべきだと思うか否かについて、今調査対象母集団の有識者に聞いた結果が次のグラフ。2007年度から問い合わせの対象としているので、グラフも2007年度以降のみとなっている。

↑ 日本が新たに国連安保理の常任理事国となるべきだと思うか(有識者)
↑ 日本が新たに国連安保理の常任理事国となるべきだと思うか(有識者)

直近2016年度においては69%が同意を示し、反対意見は18%に留まっている。2013年度以降は調査機関の変更とともに内部的な調査仕様の変更が考えられるため、一概に連続した結果として比較するのはリスクが高いが、2013年度以降は大幅に反対意見が減少し、その分賛成意見と回答留保派が増えている。

直近の2016年度では賛成派が前年度比で変わらない一方で反対派は6%ポイント減少。反対派が回答留保派に回ったと解釈できる動きをしている。現状では賛否を決めかねるとの思惑を持つ有識者が増えたのだろう。いずれにせよ、賛成派が7割近くで過半数に達し、反対派の約3倍もの値を占めていることに違いは無い。

反対する人、賛成する人、それぞれの理由

日本の常任理事国入りに賛成する人、反対する人たちは、どのような理由でそのジャッジを示したのか。それぞれの派の人限定で、選択肢の中から当てはまる理由を複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。

↑ 日本の国連安保理の常任理事国入りに賛成・反対する理由(それぞれの回答者限定)
↑ 日本の国連安保理の常任理事国入りに賛成・反対する理由(それぞれの回答者限定)

まず第一印象としては、肯定派の方が理由が多数に及ぶこと。回答率がいずれも高い結果となっている。また、肯定派では明確な「日本だからこそ」との理由が上位を占めているものの、否定派では「そもそも増やすべきでは無いから」「日本にOKを出すと、同時に(具体的国名は掲げられていないが)『この国を常任理事国にしたらマズイだろう』的な国も安保理入りを求めてくる、せざるを得なくなる可能性が生じてしまう」といった、日本とは関係の無いレベルでの話が上位についている。日本の資質そのものに問題があるのでは無く、環境上から否定している場合が多い。今件調査に限れば、そのような解釈をして問題は無いだろう。

もっとも今件は米国の有識者に限った意見の集約によるもの。米国全体としてはどのような意見となるのかまでは分からず、さらに当然、他国の動向も大きく影響する。その上、安保理、さらには国連そのものの存在意義が大義名分以上のものでは無くなっているとの指摘もある。

各国のパワーバランスをはじめとした国際情勢の大きな変容が無い限り、今後も日本をはじめとした複数国が国連安保理の常任理事国入りを求め、それに関する論議が繰り広げられるといった状況が継続するのみで、情勢そのものは大きな前進も後退も無さそうだ。

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※米国における対日世論調査

外務省がニールセン(Nielsen)社に委託し、米国内において電話により2017年3月に実施されたもので、有効回答数は一般人1005人(18歳以上)・有識者200人(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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