幼子がいる世帯の平日の帰宅時間の実情をさぐる
・幼子がいる夫婦世帯の夫の帰宅時間は20時前後。祖父母が同居していると早め。
・祖父母がいない場合は専業主婦世帯の方が夫の帰宅時間は遅い。
・保育所を利用している場合、長時間利用者ほど妻の帰宅時間は遅くなる。
共働きか否かなどで変わる平日の帰宅時間
共働き世帯の増加や子育てへの関心が高まるに連れて、就労者の平日の帰宅時間に注目が集まっている。睡眠時間との兼ね合わせもあるため就寝時刻は遅くにずらせない以上、帰宅時刻が早ければ早いほど、家事や育児に従事する時間も取れるからだ。今回は総務省統計局による2016年社会生活基本調査(※)の結果を用い、幼子がいる子育て世帯における、平日の帰宅時刻の実情を確認する。
次に示すのは6歳未満の子供がいる世帯における、平日の平均的な帰宅時刻。「夫と子供、親の世帯」とは、夫婦世帯の祖父母(一人でも可)が同居している世帯を意味する。また、専業主婦世帯では妻は就労していないため、帰宅時刻は計上されていない。
共働き世帯の場合、妻はパートやアルバイトに就労しているケースがほとんどのため、そして自宅に戻って夕食の準備などの家事を行う必要があることから、帰宅時刻は17時前後。祖父母がいる世帯では家事の一部を任せられる可能性があるため帰宅時刻は遅くなってもよいはずだが、現実にはむしろ早くなっている。あるいは介護が必要な状態のケースがあるのか、祖父母から早く帰るよう急かされているのか。
夫の帰宅時刻は大よそ20時台。専業主婦世帯で祖父母がいる場合は少し早くなり19時台に帰宅しているが、これも祖父母に急かされている感がある。他方、夫婦と子供のみの世帯の場合、専業主婦世帯の方が帰宅時刻はいくぶん遅くなり、20時半より遅くなる。
グラフ化は略するが、夫の平日における就寝時刻は23時半前後。祖父母がいる専業主婦世帯では午前ゼロ時を超えての就寝となる。帰ってから寝るまでの時間は3時間から4時間。食事を取り、風呂に入り、明日の準備をすればそれで終わってしまいそうではある。自分の趣味に没頭する時間を割くのも難しそうだ。家事・育児を夫にもとの意見が上がり、実際に夫の家事・育児の時間も伸びてはいるが、時間の確保をするためには、まず帰宅時刻を早めることが何より大切なのがよく分かる実情ではある。
保育所などの利用実情と帰宅時間との関係
続いて保育所などの子供預け入れ施設の利用の有無と共働き世帯における帰宅時刻との関係。元データには6歳未満の子供が2人以上のケースも収録されているが、それぞれの子供が利用しているか否かで分岐されており、非常に雑多な結果となってしまうため、今回は1人いるケースのみを精査する。また、在園しているが1日の在園時間4時間未満の属性は有意値が計上できなかったためにデータが空欄となっている。
在園していない場合、夫は20時前、妻は19時前に帰宅。夫はともかく妻は思った以上に遅い帰宅時刻だが、保育所などの施設以外の育児支援を受けている可能性がある。とはいえ、そればかりでは無いだろうから、そのような世帯の場合は日中の育児がどのような状況となっているのか、少々不安な状態ではある(祖父母がいる「夫と子供、親の世帯」では無いことに注意)。
該当する子供が在園している場合、妻は在園時間が短いほど帰宅時刻も早くなる。これは早く帰らないと子供を迎えに行けないからで、当然の話。あるいは逆で、短い在園時間でしか預けられないからこそ、帰宅時刻を早めねばならない状態なのだろう。
一方夫は在園時間との間に傾向だった動きは無い。在園時間が11時間以上のケースが一番帰宅時刻が早くなる。結果として子供の在園時間が長いほど、夫と妻の帰宅時刻の差が縮まる結果となっている。妻の長時間の就労を気遣い、少しでも家事などの手助けを、との思いがそうさせているのだろうか。
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※社会生活基本調査
5年おきに実施されている公的調査で、直近分となる2016年分は2010年時点の国勢調査の調査区のうち、2016年の熊本地震の影響を受けて調査が困難な一部地域を除いた、総務大臣の指定する7311調査区に対して実施された。指定調査区から選定した約8万8000世帯に居住する10歳以上の世帯員約20万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2016年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2016年10月15日から10月23日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と回収方式。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。